春といえば桜・・・ではない? 欧米人としての季節の考え方
私はポーランド出身です。ポーランドというと、すぐに寒い国のイメージが浮かんでくるかと思いますが、欧米では基本的に四季があります。
北半球なので、夏は暑く、冬は寒いという感覚も日本と変わりませんが、自然界や文化の影響によって、季節の考え方が日本と異なる点がいくつかあります。
画像:Wydawnictwa Edukacyjne WIKING
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春は3月21日から
まず最も大きな違いは何かというと、ポーランドでの四季は、気象学的季節よりも天文学的季節のほうが重要視されていることです。
つまり、春は3月21日、春分に始まるため、3月上旬から暖かくなっていても、これはまだ本物の春ではないから油断はできないという考え方になります。
また、日本では春といえば桜の印象が強いのですが、ポーランドの定番はクロッカスやスイセン等で、その後はチューリップの時期や5月になると、リンゴの花が大量に咲くイメージがあります。
文化的にもっとも大きなイベントとしては、おそらくイースターになるでしょう。キリスト教の国であるため、かなり重要視されている行事になります。(こちらは毎年時期が少し異なるので、カレンダーを確認しない限り、日付までは正直覚えていません。)
↑イースターバスケットとスイセン
また、新学期はすでに春になる前の2月ごろに始まっているため、学校や仕事的には大きな季節的な影響がありません。
唯一おもしろいこととしては、祝日などではないのですが、3月21日は「不登校児の日」ともされているので、授業をさぼっても良いとは決してなっていないのですが、その一日をピンポイントで休む人が多く、学生独自の伝統的なものになっているといえます。
氷の聖人
気温と関係のある現象として頭に強く刻まれているのは5月15日です。
5月はいくら暖かくても、その時期(「氷の聖人」と呼ばれる期間)には決まって気温が突然下がることが多いです。都市に住んでいればそこまで影響がないかもしれませんが、農家だけでなく、お庭をやっている人であれば、5月15日が過ぎない限り、急に夜の気温が0℃に下がる可能性があるため、寒さに敏感な植物には気を付けなければならない、という共通認識があります。マンションのベランダに出している植物にも影響があるかもしれないので、知っておくと便利な日付です。
↑5月のリンゴの花
夏は6月22日から始まる
こちらも天文学的季節の認識になるため、夏至からが初めて夏となります。この時期には気温が30℃を超えることがありますが、日本より湿度は低いため、梅雨はなく、昼の暑さに耐えれば夜の気温差のおかげで大分過ごしやすくなっています。
↑夏の田舎の景色
6月末と言えば、学年が終わるタイミングでもあります。学年の間にある夏休みはとても長く、高校までは2ヶ月で、大学で追試などなければ3ヶ月となります。その結果、大人になっても夏は休みの季節の認識が高く、今でも「夏」(lato)と「夏休み」(wakacje)の単語を同じ意味で使ってしまうことが多いです。
当然、学生の頃は最も幸せに感じる季節でした。これだけ長く学校に行かない時期があれば、農家をやっている親戚の家を訪れたり、両親と旅行したり、サマーキャンプに出かけたりして、いつも充実した時間になっていました。
特にサマーキャンプというのは自分にとって大事な体験で、ほぼ毎年どこかに行っていました。その長さは2週間前後で、場所は海や山だけでなく、乗馬キャンプなどもあり、更に、国内だけにとどまらず国外の場合もあるため、ドイツ語学校での勉強を兼ねて、ドイツに行ったことも何回かありました。(宿泊は基本的にテントなどではなく、宿泊施設の部屋が基本となります。)
また、学校ではなく旅行会社で予約できるものなので、毎回同年代の新しい人と出会う機会になっていて、色んな環境になれるための経験になっただけでなく、学校の外には広い世界と友達になれる人たちがいることを定期的に思い出させることは精神的に非常に良かったと思っています。そして、親としても、子どもが24時間、先生やガイドの資格がある方々に見守られているため安心感があり、学校がない時期も仕事に集中できて、良いシステムだと思います。
↑2007年に参加したサマーキャンプの3~4人のコテージ
水遊びの時期もカレンダーで決まっている
ポーランドでは法律的に6月1日から9月30日までは湖や川で泳いでも良い時期だとされていて、これは水の温度等が安定していて、比較的安全な時期だとされているからです。
ですが、昔から、洗礼者ヨハネの日のイブ前、つまり6月23日には水に入ってはいけないという言い伝えがあります。その日にならないと水のお祓いが済んでいないので、そこに潜んでいる悪魔に襲われるかもしれない、というお話があります。もちろん一般的に信じられている話、というわけではなくて、ただ、それぐらいの時期までは水の温度が低く、川の流れが強かったり、渦などができやすい、泳ぐには危険な時期だってことが意識されていました。
調べてみればしっかりと化学根拠がある言い伝えはやはり昔の自然界の理解を表している点が非常に興味深いですね。
↑ポーランドの海辺の様子
「秋の初日は9月23日なので、9月上旬のお休みも夏休みです」
日本での9月は過ごしやすくなるため、23日までに旅行を企画している時はよく上記のセリフを言っています。ポーランド人としての認識では、秋分にならないとまだ本物の秋ではないので、ギリギリまで夏であると言い張るのが私のスタイルです。
↑ポーランドの紅葉
高校卒業まで、9月1日は学年が始まる日で、現実に戻る時期でした。それ以外は大きなイベントがなく、ハロウィンなども、「アメリカでやっている行事」のレベルにすぎませんでした。
というのも、11月1日はポーランドのお盆、死者の日になっているため、仮装してパーティーをするより、墓参りに忙しくなる時期でした。その次には11月11日はポーランドの独立記念日のため、戦争で亡くなった人たちを思い出しながら、気温がかなり下がっているなか、暗くて重い行事が続いているような時期にしか感じないことが多かったです。
赤ではなく、金色の秋
↑ポーランドの金色の秋(地元の公園)
自然界で言いますと、ポーランドの森や公園には、シラカバのように、葉っぱが黄色く染まる気が多いため、紅葉がありますが、それは「金色の秋」と呼ばれています。
また、その時期も日本よりは早く、9月から10月までの期間となるため、球果植物を除けば、11月から葉っぱが残ってない木がほとんどのため、何もないグレーの空の景色が長く続いている印象が強いです。(先ほどの暗い行事の雰囲気のせいでもあると思います。)
↑11月の景色(地元の公園)
冬は12月22日から
イルミネーションやクリスマスツリーが街中にあっても、寒くなってきても、「本物」の冬の始まりは冬至になります。
もちろん服装などはもっと早い時期から冬物になっていることが多いのですが、マイナス気温になりやすい冬を極端に長く感じないように、始まりと終わりのある天文学的季節として考えたほうが楽な部分があるかと思います。
↑山地方の観光地 – ザコパネ
ちなみに、クリスマスと言えば、日本と違って家族と過ごすような大事な行事ですので、当日及び翌日の26日も祝日になっています。チキンやケーキ、七面鳥等はなく、食べるのは鯉やピエロギ等の伝統的な料理です。(名前には「ケーキ」が付くチーズケーキなどもデザートとして出ますが、誕生日ケーキっぽい見た目にはなっていません。)
そして、大晦日にはパーティーに出掛けたりして、0時になったら、花火を打ち上げてシャンパンを飲みますので、過ごし方としてはクリスマスとお正月が日本と逆になっている感じが強いです。
↑クリスマスイブのテーブル(まだ準備中の様子)&手作りのチーズケーキ
他にも季節があります
日本で夏に梅雨があるように、ポーランドには気温で決まる「春前」と「冬前」と呼ばれているものがあります。
季節の認識として、ポーランドの冬の気温は0℃を下回る時期で、春と秋は5℃から15℃までの幅になりますので、その間の0℃から5℃までの気温が続く時期は「春前」「冬前」になり、温帯にある地域の特徴だそうです。
私生活ではあまり意識したことがない季節ではありますが、ポーランドの文学にも「大きな変化直前の時期」という意味で「春前」という言葉が登場しているため、古くから文化の一部となっているようです。
まとめ
それぞれの季節の過ごし方、代表的な植物やその他の自然界、文化的な影響についてはいくら話しても切りがないと思います。日本ではイチゴがおいしくなるのは冬で、ポーランド畑のイチゴの実がなるのは6〜7月だとか、その環境によって違いが非常に多いです。
しかし、同じ「四季」、「夏」、「冬」という言葉を会話の中に使っていても、その言葉がもたらすイメージが大きくなることがあります。
↑イチゴ畑
昔のポーランドの辞典にはこういう記載がありました:
「馬 ー 馬は見える通りのものです。」
つまり、馬について皆の共通認識が同じということだったのですが、母国じゃない国に住んで、その土地の言葉を理解していれば、人によって見えている馬も異なることに毎日気づかされます。