文化と語感のズレから生まれる小さな誤解、香港人は「はいはい」がかわいいと思っている?
日本を何度も訪れる香港人旅行者がたくさんいます。毎年のように日本を旅し、買い物・温泉・グルメ・ローカル体験を楽しむ人たちは、日本語ができなくても、自然に「ありがとう」「すみません」「はい」などの簡単なフレーズを使いこなすようになります。
中でも「はい」は特に親しみやすい表現です。
でも、そんな「はい」から生まれる、ちょっとした誤解があることをご存知でしょうか?今回は、香港人の目線から見た「はい」という言葉にまつわる文化的なギャップについてご紹介します。
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「はいはい」=かわいい?香港人の素直な誤解
まず前提として、香港人にとって「はい」という音はとてもなじみ深いものです。なぜなら、広東語では「係(hai6)」という言葉があり、これは「はい」や「そうです」という意味を持ちます。発音も「はい」とほぼ同じ。そのため、日本語が話せなくても、香港人の多くは違和感なく「はい」と返事をします。
さらに、広東語には「係呀(hai6 aa3)」(ハイア)もしくは「係呀係呀(hai6 aa3 hai6 aa3)」(ハイアハイア)という言い回しもあります。これは、相手の話に強く共感するときに使う表現で、日本語にすると「そうそう!」や「わかるわかる!」のようなニュアンスです。
このような文化背景があるため、香港人にとって「はいはい」は単なる返事以上に、「親しみ」や「軽やかな共感」を表す語感として捉えられているのです。
加えて、アニメやバラエティ番組の影響もあります。かわいいキャラクターが「はい〜」と返事するシーンを見て、「これは日本人も日常で使うカジュアルでかわいい言い方なんだ」と思い込んでしまうこともあります。また、最近だいぶ流行ったかわいい系の日本語の歌のせりふパートは「はーい!」を強調してます。「はい」と言うとかわいいと思う外国の方が多くなるかもしれないですね。
日本ではNGな場面が多い「はいはい」
香港では、友達同士や親しい人との間で、テンポよく「係係(はいはい)」と返すのはよくあることで、そこに失礼さはありません。むしろ「わかったよ〜」「冗談まじりで聞いてるよ〜」という気軽なノリに近いです。
ところが、日本語ネイティブの感覚では、「はいはい」はまったく別の意味を持つことがあります。特にフォーマルな場面や職場で「はいはい」と返事をすると、以下のような印象を持たれてしまう可能性があります:
- 面倒くさそうに聞こえる
- 相手の話を軽視しているように感じる
- ちゃんと聞いていない/適当に流している感じがする
つまり、「はいはい」は共感やかわいさの表現ではなく、むしろやる気がない、礼儀がないというネガティブな印象を与える表現になってしまうことが多いのです。
じゃ、「そうそう」はOK?
日本語を学びながら、香港人としてふと感じることがあります。
それは――「そうそうそうそうそう」は連発OKで共感力があるって言われるのに、「はいはい」って2回言っただけで「失礼」って思われるの、正直ちょっと不公平じゃない?
もちろん、それぞれの言葉に込められた語感や文化背景があることは理解しています。
でも、香港では「ハイアハイア」のように、返事を重ねること自体が共感やノリの良さの表現になる文化があるからこそ、こうした「語感の地雷」にうっかり触れてしまうこともあるのです。
香港人にとっては、「はいはい」という表現は小さな落とし穴です。「はいはい」も「そうそう」も、単純に「同意したい気持ち」の表れであることが多いのですが、相手の文化や語感を尊重するためには、言葉の使い方を場面によって柔軟に変える力が求められます。
語学とは文化を読む力でもある
使い方ひとつで、相手の印象が大きく変わってしまう――それが日本語という言語の奥深さでもあります。
他の言語を学ぶときには、文法や単語だけでなく、言葉の温度や空気まで汲み取ろうとする努力が欠かせないのです。それでも、少しずつその違和感に気づき、気をつけるようになっていきます。どうか、日本語を学ぶ外国人の「ちょっとしたズレ」も、温かく見守っていただけたら嬉しいです。