参加者視点から見るポーランドの結婚式&披露宴
日本では「洋風の式」と呼ばれる結婚式があり、教会での式、白いドレスやウェディングケーキなど、写真だけを見る限り、同じ様子が写っていることが多いです。しかし、ポーランド人として子どもの頃から何度もゲストとして参加してきた私から見ると、実際の日本とポーランドの結婚式には多くの違いが見えてきました。
今回は、現地のリアルな視点から、ポーランドならではの驚きの文化や習慣についてご紹介します。
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ポーランドの結婚式の豆知識
基本的にキリスト教(カトリック)の国であるため、教会で式を挙げることが最も一般的になります。しかし、日本と異なり、その教会はウェディングのための可愛くて白いチャペル等ではなく、毎週ミサで使われる建物となります。近年は、教会を見た目で選ぶケースもあるかと思いますが、基本的には新郎新婦どちらかの地元(小教区)の教会で行うべき、というルールがあり、それ以外の場所を希望する場合は神父さんからの許可が必要となります。
ヨーロッパでの教会は、小教区ごとに信者のデータを登録しており、洗礼、初聖体拝領、結婚、葬式など、誕生から死亡までの記録が管理されています。そして、カトリックでは離婚というものが認められていません。つまり、法律上で離婚しても、極めて稀な事例を除き、宗教上は再婚ができません(再婚は死別の場合のみになります)。
もちろん、信者ではない、教会で式を挙げたくない、という方も少なくないです。その場合、結婚式は区役所のような場所の結婚式用のホールで行い、法律上で婚姻届を提出する流れになります。そのため、再婚の場合等もこの形式が選べます。
唯一の問題点としては、そのようなホールは教会ほど豪華ではないところがあることですが、最近はお庭などの外での結婚式や専用の施設に役員を呼び出して、自分が選んだところで法律上で有効な式を挙げることが可能になってきました。しかし、まだまだアメリカの映画ほどその景色は一般的ではありません。
それでは、なぜ日本人は信者ではないのに、教会で結婚式を挙げられるのか?という疑問がある方もいるかもしれませんが、それは、特例として(いわゆる「お試し」という形で)、バチカンから特別に許可があるからです。
いくつかルールがあるようですが、その中で、ミサは行ってはいけません、というところも含まれているため、ポーランドの1時間ぐらいのミサありきの結婚式よりはかなり短くなっています。また、ミサというと、日曜日のイメージが強いかと思うのですが、そうすると関係者以外の方も多くなるので、収まりを良くするために基本的に土曜日に行われます。また、もう一つのメリットとして、全員向けのミサが行われていない日に実施することで、教会の祭壇やベンチ(客席)などを新婚さんの好みに合わせて花などで飾ることもできます。(逆にそうでもしない限り、通常通りの見た目のままになってしまうので、せっかくの写真や映像などで暗く残ってしまう可能性もあります。)
↑ 教会、結婚式のミサの様子
↑ 通常のミサのため、新郎新婦が座ったり、跪く場面もあります
披露宴へ
結婚式が終わったら、教会から出てくる新郎新婦を米、小銭、花びらか紙吹雪等で迎えることが多いです。外とはいえ、環境に優しくないとか、片付けが大変、という理由で最近はそういう演出をやらないカップルも多くなっているのですが、私が子どもの頃は、小銭が混ざった「米吹雪」が地面に落ちたら、新郎新婦がその小銭を拾う、といった開運のための習慣がありました。
そして、そこからはもう披露宴が行われる施設へと移動することになります。車社会なので、移動も基本車にはなるのですが、それが難しいゲストが多くあれば、マイクロバスやバスで送迎サービスを準備することもあります。新郎新婦が乗った車は綺麗に花等で飾ってありますが、家族や親戚も、参加者であることを示すため、自分の車にも色とりどりの風船やリボンを付けることもあるので、集団で移動する際は車のパレードのような見た目になることもあります。ちなみに、ポーランドでは本来理由もなく車のクラクションを鳴らしてはいけないのですが、披露宴への移動中に何度も鳴らすことが良くあります。結婚はそれだけ特別な機会であるためです。
特に面白いのは田舎での結婚です。マンションでもやることがあるのですが、田舎の一軒家であれば、その家の人が結婚することを皆に知らせるために、ゲートに「冠」と呼ばれる飾りを作って飾ることが多いです。球果植物、花、リボン、風船等を使って、ドアやゲートのところにアーチを作る形となり、周りのフェンスを飾ることもあるので、遠くから見えてきて、家ごと華やかに見える伝統です。(ちなみに、順番としては、新郎の家からスタートしてから、次に新婦の家を飾っていくような決まりもあるようです。)
そして、教会から披露宴へと移動する際、新郎新婦の車が先頭となり、ゆっくり進むことが多いですが、田舎であれば、そこの住民や知人が1箇所か複数のところで道路をブロックすることもあります。そこで止まった新郎新婦はブロックを立てた人たちと交渉して、通してもらうためにウオッカ等を渡すような流れになります。
そうすることで、披露宴に招かれなかった知人でも、個別でお祝いすることができるので、コミュニティの絆も保たれるわけです。普段見られないような光景なので、思い出すだけでとても懐かしい気持ちになります。
↑ 披露宴テーブルの様子
披露宴:1日目
パーティーが行われる施設に着いたら、まずは並んで、順番に新郎新婦への「おめでとう」の言葉、花束、プレゼントやお金を渡していく流れが多いです。日本みたいに、渡すべき金額などは特に決まってないのですが、披露宴のコストにあったような金額感や、親しい人ほど大きな金額をあげる、という似ている感覚があるかと思います。
大きな違いとして、お金が入った封筒だけだと寂しい感じがするので、お菓子や花束等を一緒に渡すことが多いです。しかし、近年は、大量に花をもらっても枯れていくだけなので、代わりに、動物園シェルターに寄付できる犬・猫用の餌、ペット用品をあらかじめ希望する新郎新婦が増えた印象を受けました。
挨拶を交わして、プレゼントも渡したら、次は自分の席を探したり、お手洗いへ行く等の時間があります。特に急ぎはないので、ゲストの皆が席に着いたら、初めて新郎新婦の正式な登場となります。
結婚式に限らずに、ポーランドでは人をパンと塩で迎える瞬間があるので、披露宴の施設スタッフも同様に新郎新婦を歓迎することが多いです。その次に新郎新婦に渡されるのは、2つのショットグラスです。片方にはウオッカで、もう片方には水があります。見た目は一緒のため、何が入っているか分からないまま片方を飲んで、ウオッカに当たった人の方がその夫婦内のボスになる、というちょっとした占いになっているようです。
ポイントとしては、最後まで飲み干して、開運のためグラスを割ることです。近年も同様に行われているかは、正直記憶が定かではないのですが、シャンパンでの乾杯になったとしても、グラスを割ることは今も残っているはずです。
ここまできましたら、皆がかなりお腹すいている時間になるので、次はご飯の時間となります。基本的にメニューは新郎新婦が事前に選んだものになるので、何が出てくるかは分からないのですが、スープは基本的にポーランド料理定番のチキンスープとなります。中にはパスタが入っており、飾りにはニンジンやパセリを使うことが多いチキンスープは、家庭料理の定番で、祝日、特に日曜日に家族が集まるご飯にはよく出てくるものです。その濃さの好みは人によって異なったりするのですが、風邪の時や二日酔いにも効くとされている存在です。
スープを食べたら、次にはメインディッシュが入ってくるのですが、ここはもう本当に決まりがあまりありません。よくあるものとして、主食のジャガイモ、野菜やサラダの種類と何かしらの肉料理などです。チキンカツみたいなものがポーランド料理にもあるので、日本人の口にも合うかと思います。
個人的に大好物はチキンキエフとも呼ばれるCutlet De Volailleという料理です。鶏むね肉のロール巻きみたいな料理で、中にはハーブバターが多いですが、他にもチーズやマッシュルームなどのバリエーションがあって、食べる機会があればぜひおすすめです!メインのご飯以外には、ソフトドリンク、様々な種類のケーキやサラダとその他のおつまみが常にテーブルに置いてあるので、基本的に好きなものをお腹いっぱい食べれます。
ダンスパーティーの始まり
その後は「ファーストダンス」の時間がやってきます。ヨーロッパでは誰でも踊れる、というわけではないのですが、それだけのためにダンスレッスンを受けたり、独自のパフォーマンスを用意するカップルも少なくありません。逆に、どうしても踊れない、という方は、スモークマシンなどを使って、足を多少隠すための技術もあります。新郎新婦が選んだ曲のダンスが終わりましたら、その後はもうゲスト全員が踊っても良い時間に入ります。最初に踊り始めるのは、勇気が要ることに見えると思いますが、新郎新婦のご両親、ご家族が親戚やお友達、全員に楽しんでもらえるように、積極的にダンスフロアに出ることが多いです。
日本でも、MCをされる方がいるのですが、ポーランドの場合、MCだけでなく、DJとして、客を楽しませる人を雇うことは一般的です。こちらに関しては、予算によりますが、DJ兼MCのみの場合があれば、生で歌うアーティストさんから、数人で一晩(場合によって2日も)パフォーマンスしてくれるバンドを雇うこともあります。基本的に、アーティストさんも食事などの休憩もありますが、その時も「休憩に行ってきます」という曲があります。(厳密に言いますと、「お酒を飲んできます」という歌詞のものです。)その歌のおかげでいきなり静かになることなく、ゲストもテーブルに戻るタイミングが自然と分かるので、特別な誘導なくても、とても自然な流れができてきます。
その後の流れは新郎新婦、DJ・アーティストさんのリード、披露宴会場等によると思いますが、共通のポイントも見られるかと思います。例えば、夜にはもう一回(場合によって1回以上)温かい食事があり、決めたタイミングでケーキが登場して、新婚さんの共同作業の時間等もあります。その間には乾杯や、(ゲストがまだ疲れていない、落ち着いた時に)ご両親、兄弟等とのダンス、ペア以外で踊れるダンス遊びなど、定番の行事も行われます。特にケーキ登場とそれを切る共同作業には個人差があり、デザートとして、食後やファーストダンスのあと、つまり、お酒はまだたくさん飲まれていないタイミングに設定することがあれば、夜22時など、独立したアトラクションとして扱う場合もあります。披露宴自体が、レストランでのシンプルな食事等でなければ、夜0時前に終わらせることは基本的にないので、遊べる時間がたっぷりありますし、それぞれの「ミニイベント」の時間割、プランニングが非常に重要になります。
披露宴のクライマックス
夜の0時はやはり特別な時間です。その時間になると、ポーランドの伝統である「oczepiny」(オチェピーニ)が行われて、未婚の女性が人妻へと変化することを象徴しているタイミングです。定番として、新婦がベール(veil)を独身女性の方に投げて、新郎が自分の蝶ネクタイを独身男性の方に投げます。それをキャッチできた2人は一緒に踊る等の流れになります。また、最近はベールではなく、アメリカの影響で花束を投げるなど、変化していくこともありますが、元々ポーランドの伝統であった行事・遊びも残っています。
特に遊びの種類はたくさんありますが、個人的に印象的だったのは、「新婦の足を当てる」です。具体的にその流れを説明しますと、新婦と他の女性数名が椅子に座り、ドレスの裾を太ももまでまくり上げます。そして、新郎は目隠しをされ、膝を少し触るだけで花嫁を当てるゲームになります。ここまでは普通の流れになりますが、この時間帯ではお酒が入っていることもあり、いつも少なくとも男性一名が女性たちと並んで座り、自分の足を差し出す流れが見どころとなります。(美脚に自信のある男性であれば、ゲームもより面白くなります。)
そのほかにも、ペア向けのゲームとして、新聞の上で2人で踊る遊びもあります。最初は広く広げられた新聞が、曲ごとに小さく折り畳まれて、そこから足が少しでも出たペアはゲームオーバーとなり、優勝者は相手を持ち上げながら踊る場面もあるのだとか~ 他にも、ミスしたらお酒を飲まされる遊びや、新郎新婦のみが出ているクイズなど、披露宴のMCが選択できる内容が非常に多くあるので、ゲストの年齢やその他の特徴に合わせられやすいものです。
カップルによって、その時間帯はケーキが初めて登場するタイミングになったり、遊び以外に、ご両親に感謝を伝える、とても感動的なひと時であったり、感謝の気持ちを伝える意味で、ご両親と踊るタイミングである場合があるので、ほかのイベントと同様に、行われるべき行事が大きく決まっている一方、そのタイミングはかなり自由です。
朝までのパーティー
0時の「oczepiny」(オチェピーニ)は通常は披露宴の最後のイベントとなり、午前1時を過ぎたら、ゲストがちょこちょこと帰宅される時間にもなります。しかし、それは普段明確な解散時間でもなく、朝の4〜5時までMC・DJ・アーティストさんがいて、ずっと音楽を流していることも少なくありません。そして、それまで長くパーティーの予定があれば、午前2〜3時にまた温かい食事が用意されているケースもあります。
その時間帯にはもう「ミニイベント」のような予定がほとんど入っておらず、無礼講に近い形のパーティーとなります。例えば、ルールではないのですが、そのタイミングで新婦がもう少し過ごしやすいドレスや靴に着替えることがあり、朝まで遊べるように、ちょこっと休みをいれることもあります。しかしそのお休みのひと時もたいていは短く、自由なタイミングで帰られるゲストを見送り当番が始まります。
解散の時間が無いからこそ皆が個別に新郎新婦に挨拶をしてからご自宅、またはホテルの部屋に戻る流れとなり、その際は手土産として残ったケーキなどを渡される場合が多いです。普段あまり会う機会がない親戚や友たちと遊ぶ重要な時間なので、お二人の特別な日でありながら、多くのカップルができるだけ参加者の皆と話したり、踊ったりする時間を作るように頑張っています。そのため、その場の主催者として、最後の1人を見送るまで、その場にいるように努力する流れが一般的です。
二日目
日本で同じ日に行われる「2次会」と近いイメージになるのは、ポーランドでの二日目になります。服装はフォーマルなドレスコードより、セミフォーマルとなり、一日目のようなイベントも無く、気軽にご飯を食べて、また夜まで遊ぶ流れとなります。
通常は、こちらで初めて、日本でいう「お色直し」があり、新婦は白以外のお気に入りの色のドレスで登場し、新郎はそれに合わせた色のスーツを着たり、そもそもジャケットなしのセミフォーマルな格好を選ぶことも少なくありません。(ちなみに、二日目を設けないカップルの場合、0時の遊びが終わるタイミングで「お色直し」を行うことが多いです。)
日本と異なるところをピックアップすると、日本の二次会には友達を中心に、結婚式・披露宴に招待されていない人が顔を出すことが多いですが、ポーランドの2日目はだいたい一日目と同じゲストが招待されており、2日間も参加できる距離に住んでいる人や、披露宴の施設の部屋や近くのホテルに宿泊している人が中心となります。
そもそも二日目は「poprawiny (ポプラヴィニ)」といって、その意味は、一日目の“お直し”“仕上げ”、ということになり、簡単に言いますと、1日では飲み足りなかった分を二日目に仕上げる、ということです。
つまり、主な目的は無礼講となり、特別な過ごし方やそのルールは基本的に定めていません。しかし、その日も同じDJ・アーティストさんにお願いする場合が多く、自由な踊り以外に、軽いゲームやクイズ、皆で歌えるようなカラオケパーティーを行う場合もあります。また、お酒やおつまみ以外に、ご飯やデザートのケーキなども用意されており、夕方まではゆっくり過ごせます。
最近、二日目をそもそも設けない場合が増えているのですが、もともと新郎新婦がよりゆっくりゲストの皆と話せる場でもありました。結婚式当日と異なり、すべきことはもうあまり残ってないので、自由にパーティーを楽しめる時間にもなっています。
また、基本的に日曜日、ということもあり、20時にはもうお開きの時間を設けて、お酒を飲まれた人でも翌日は問題なくお仕事に戻れるように考えられています。
↑ 二日目とお色直しの様子
まとめ
以上はポーランドの結婚式、披露宴と2次会の流れのイメージとなります。地域によって独自の伝統があったり、行事やそのタイミングには差があることも多いので、「一律にこうです」とは言えないと思いますが、少しでもそのイメージや日本の結婚式・ウェディングパーティーとの違いが明確になってきたら嬉しいです。
そのなかには、印象的な場面がたくさんあると思いますが、個人的に面白いと思うのは、新郎新婦のキスを呼びかけるところです。その要求のセリフは決まって「苦い!」という呼びかけになります。
説明しますと、それは料理の批判などではなく、ウォッカが苦く、美味しく飲めるには、新郎新婦のキス、というおまじないが必要だ、という意味になります。もちろん、シンプルな呼びかけ以外にはシンプルな歌もあり、その歌詞には、「キスが短すぎたからウォッカは飲まない!」、「新郎からキスすべき」、「新婦からキスすべき」、「立ち上がってキスすべき」といったバリエーション豊かな要求があります。
他にも、この記事でメンションできなかった見どころがきっとたくさんあると思いますので、ご自分で参加できる機会が訪れなかったとしても、YouTubeなどで検索してみると面白い発見ができるかもしれません。









