コペルニクスといえば地動説と、、、クリスマスの定番?
『チ。 ―地球の運動について―』という漫画・アニメをご存じの方はニコラウス・コペルニクスもご存じかと思いますが、描かれているストーリーの舞台はどこの国なのか気になったことありますか?
実話に基づいた話である以上、異世界などではなく、背景になっているのはヨーロッパの街並みです。特に、私の母国でもあるポーランドとその中北部にあるトルンという町が重要な舞台になります。
しかし、その町には綺麗な街並み以外にも、まだ知られていない魅力が多く潜んでいます。
↑ トルンの旧市街
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トルンという町と、ジンジャーブレッド博物館
ニコラウス・コペルニクスが生まれたのは、トルン(Toruń)という場所です。ヴィスワ川のほとりに位置している町ではありますが、何より印象的なのは、その川沿いに広がる旧市街の景色です。赤レンガが目立つ歴史的な街並みは今も変わらないため、単なるお散歩でもタイムスリップか異世界転移の気分が味わえる場所です。
その旧市街にはトルンの斜塔や旧市庁舎博物館のような迫力のある建物が多く並んでいる中、コペルニクス像やコペルニクスの生家もあります。さらに言いますと、私も通っていたコペルニクス大学まであります。
そしてもう1箇所、観光客に非常に人気があるのは、「ジンジャーブレッド博物館」です。
↑ ヴィスワ川から見える街並み
↑夜の旧市街と、ニコラウス・コペルニクスの像
トルンのジンジャーブレッド(ピェルニク)とは?
ブレッドを直訳すると、パンになります。なのでこの言葉だけではお菓子のイメージがあまり湧かないのですが、ポーランド人としてはやはりケーキやクッキーのイメージが一番強いです。
ジンジャーをはじめ、スパイスがちょうどよくきいている甘いもので、チョコレートや果物系のマーマレード(ジャムっぽいもの)との印象が非常に良いため、ジンジャーブレッドのお菓子の種類は現在非常に豊富になっています。紅茶やコーヒーにもとても合うので、現在も大変人気があります。しかし、博物館があるほど、歴史のあるお菓子であることにポーランド人も驚きます。
トルンのジンジャーブレッドの歴史を調べてみると、その地には元々ドイツ人も大勢住んでいて、ハチミツや植物の根を使ったスパイスで甘いもの作る習慣がもともとあったようで、ジンジャーを使った焼き菓子作りは1380年ごろにもあったとのこと。そして、1725年に書かれたレシピが今ものこっているようです。
たまたまかもしれないですが、トルンの位置によって、質の良い小麦粉、ハチミツとスパイスは比較的手に入れやすかったそうで、そのような色んな原因がコペルニクスの町のジンジャーブレッド(ポーランド語では piernik (ピェルニク))の発展に繋がりました。
人気のあるお菓子である以上、様々なブランドがジンジャーブレッドのお菓子を作っているのですが、最も有名なのは、そのままのブランド名の「コペルニクス」の「トルンのジンジャーブレッド」です。
↑「コペルニクス」の「トルンのジンジャーブレッド」
ポーランド人の私がおすすめする味は・・・
そして、様々なフレーバーがある中で何よりおすすめなのは、バラの味です。バラと言っても、厳密にいうとローズヒップのジャムですが、他のものにはなかなか例えられない、香りの強い味です。
最近は世界中の果物が手に入りやすいため、ローズヒップを使ったものがお茶以外でも珍しくなっていますが、それこそがひいおばあちゃんが作っていたジャムを思い出す、とても懐かしくて大好きな味です。(どれだけ好きかというと、家族に頼んで、庭にローズヒップが実るバラを植えてもらったぐらいです。)
クリスマスの定番といえば!
まず、前提から言いますと、これまで紹介したのはふんわりしたジンジャーブレッドの種類です。大きく分けると、実はもう一つの種類があります。それは平たくて、少しかためなジンジャーブレッドで、主にはクッキーのレシピに使われているものです。ジンジャーブレッドマンはまさにその種類です。
では、なぜジンジャーブレッドはクリスマスの定番料理になっているのでしょうか?
専門家ではないので、こちらからはリサーチ結果とポーランド人としての感覚に基づいた内容になります。
私の理解では、まず、ジンジャーには温まる効果と落ち着かせる効果があるため、冬にはピッタリの食材です。そして、昔は冬に新鮮な果物を手に入れるのは難しかったため、こういうスパイス系のお菓子が作りやすかったはずで、保存もしやすかったです。また、ポーランド語でのリサーチによりますと、昔は幸運と裕福をもたらすものとして、手土産やプレゼントとしても人気があったようです。
もう一つ特徴がありまして、保存しやすいだけでなく、乾燥させると硬くなって簡単には壊れたりしないので、クリスマスツリーの飾りとしても使われていました。そして、食べ物はもちろん無駄にはできないので、硬くなったとしても、温かい牛乳や紅茶等にしばらくつければ柔らかくなってくるので、クリスマスツリーでの役割を果たしたものは食べられます。そう考えると本当に冬の時期には万能のお菓子でした。
現代のジンジャーブレッド
現在も、ジンジャーブレッドのクッキーを様々に焼いて、それを飾るのはヨーロッパでのクリスマスの伝統・習慣となっています。
その中で特に絵心と技術が必要なのはいわゆる「ジンジャーブレッドハウス」です。
名前の通り、家の形になるピースを揃えて、砂糖(アイシングと同じもの)などで区付けたものなので、手作りだと難しいですが、最近は全てのパーツができているような、組み立てるだけのものを購入することができます。かなり便利な世の中になってきましたね。
↑ジンジャーブレッドのクッキーミックスと、飾る前の焼きたてクッキー
ジンジャーブレッドのクッキーも、子どもの頃は、作るのが大変、というイメージがありましたが、最近ではクッキーミックスの種類として購入できるので、気軽に作れるようになりました。また、アイシングも、日本によくあるチョコペンと同じ形になっているため、それも使いやすく、子どもでも部屋中が汚れる可能性が低くなってきました。
現在日本に住んでいる私は、ジンジャーブレッドのクッキーをクリスマスツリーの飾りとして使うことはもうないのですが、やはり毎年作りたくなります。
それはなぜかというと、細かく飾るのは好きな作業ですが、その作業のおかげで準備の期間が延びて、クリスマスもその分長くなると思います。特に実家に帰ったら、家族が他の料理等を作っているうちに、近くのテーブルに座って、皆と会話をしながら飾っていると、日常生活の忙しさのなかで話せなかったことを初めてゆっくり話せる時間ができると思います。
日本と違って、欧米でのクリスマスは家族と一緒に過ごす行事なので、日本の年末年始に例えやすいです。そして、準備を含めて、そういう家族と過ごせる時間こそが欧米の映画等でよく言われている「クリスマスの魔法」になっていると考えています。
↑実家で作っていたクリスマスのジンジャーブレッドのクッキー
まとめ
ポーランドという国では、歴史の旅や食の旅、様々な楽しみ方ができる場所になっているのですが、コペルニクスとジンジャーブレッドのように、意外な繋がりもたくさんあります。
今回は、アニメ「チ。」をきっかけに、数年前から毎年クリスマスに作っているジンジャーブレッドのクッキーとコペルニクスの町、トルンに住んでいたころの記憶がよみがえりましたが、1種類のお菓子でも思ったよりもずっと奥が深く、歴史も長くて、知らないことたくさんありました。日本ではジンジャーブレッドの購入はヨーロッパほど簡単ではないかもしれませんが、ポーランド旅行のきっかけになれば、それは何より嬉しく思っています。
↑ トルンの春