わざわざ見に行く価値あり?江戸時代に栄えた日本原産の花「花菖蒲」
毎年、梅雨の時期になると日本各地でも紫陽花が咲き乱れますが、紫陽花だけではなく、同じ日本原産の花菖蒲(はなしょうぶ)も見ごろを迎えます。東京周辺の小江戸・千葉県佐原を訪れ、江戸時代から愛されている花菖蒲について学び、花や歴史の夏旅に出かけましょう。
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佐原はどこ?江戸の水郷地帯
千葉県香取市にある佐原は、かつて利根川の水運の中継地であり、川の両側には古い江戸時代の建物が残っています。「小江戸」とも呼ばれ、千葉県の佐倉、成田、銚子とともに日本遺産に登録されています。
また、日本初の国土測量図を作成した歴史的偉人、伊能忠敬の旧宅と記念館がある場所でもあります。
400種類以上の花菖蒲を楽しむ!水郷佐原あやめパーク
桜の季節が終わると、夏の訪れを告げる花菖蒲が咲き誇ります。水郷佐原あやめパークが、毎年5月下旬から6月にかけて花菖蒲祭りを開催します。400種以上、150万本の花菖蒲が咲き誇り、園内をサッパ舟で遊覧することもできます。
ベンチに休憩しながら、花菖蒲を観賞します。
江戸時代で最初に栽培された300種の花菖蒲は「江戸系」と呼ばれ、その後、伊勢系、肥後系、長井系などが各地で栽培され、一部は室内鑑賞用として栽培されるようになりました。花の形が異なるだけでなく、種名も詩的です。
花月夜、夕霧、雪牡丹、五月晴など優雅なネーミングも花見の楽しみの一つ
霓裳羽衣と命名された花菖蒲。霓裳羽衣の曲は、唐の玄宗が楊貴妃のために作ったとされる曲。美人の踊りを連想させるネーミングがセンスありますね。
サッパ舟に乗って、視線に近いところで花菖蒲を見るのがおすすめです。
サッパ舟は、「笹舟」という言葉から由来したと考えられています(諸説あり)。水郷の田園地域の間で移動が便利で、農業には欠かせない重要な役割を果たしています。
同じ場所に長く植えると花菖蒲が咲かなくなるので、花を咲かせるためには2、3年ごとに別の場所に移植する必要があります。 美しい花菖蒲の群生を見ることができるのは、植木屋さんの努力です。
水郷佐原あやめパークでは、時期によって、藤、蓮、バラ、紫陽花など様々な花を楽しむことができます。
水郷佐原あやめパーク
住所:千葉県香取市扇島1837-2
営業時間:あやめ祭り(5/29~6/27)8:00〜18:00
アクセス:佐原駅からタクシーで約20分/車で佐原香取ICから約30分
公式HP:https://ayamepark.jp/
昔は世界で開花していた?花菖蒲が栄えた過去
江戸時代初期、花菖蒲は田畑に群生する野草にすぎず、農民は満開の花菖蒲を見て梅雨の到来を知りました。その後、農家が庭に花菖蒲を植え、多くの品種が開発され、花の色、花弁の形や姿も多様になりました。
東京・葛飾の堀切周辺は、花菖蒲の栽培に適した河川敷です。日本最古の菖蒲園は「堀切菖蒲園」といわれ、最盛期には5つの観光菖蒲園があり、今でも葛飾区の観光名所となっています。堀切の景観は「江戸百景」のひとつに数えられ、当時の菖蒲園は、江戸庶民の娯楽の場であるとともに、浮世絵師たちに優れたインスピレーションを与えたといいます。
明治維新後は、欧米に苗を輸出していた時代もあります。第一次世界大戦でヨーロッパへの輸出は激減され、東京で現存する菖蒲園は堀切菖蒲園しか残らないことになります。
外国人にとって、日本を代表する花はもちろん、桜です。旅行者が一番見に行きたい景色も桜、紅葉、雪景色となっています。「花菖蒲」と言ってもピンと来ないようです。
現在は、若者が新しい物やおしゃれを求めている「インスタ映え」の時代で、花菖蒲が古い、高齢者の趣味だと思う人、わざわざ花菖蒲を見に行きたい人も少なくはないですね。伝統の「和」を感じさせるお花を守り続ける人たちを尊敬します。