「巫女体験研修」にアメリカ人が参加。一番きつかったのは○○神事!
こんにちは、アメリカ出身のブリタニーです。初めてアニメで巫女さんを見て「かっこいい」と思ったのは、もう20年以上前の話です。最近思いがけないチャンスで、大阪府枚岡神社(ひらおかじんじゃ)で一日の巫女体験に参加させていただきました。
枚岡神社は長い歴史を持つ生駒山麓にある神社です。大阪市内を一望でき、晴れた日には淡路島まで見渡せます。森に囲まれていて、私の好きな神秘的な雰囲気がある場所です。1年ほど前、この神社を散策していたとき、巫女体験の案内が掲示されているのを見かけました。それには「年齢不問」と書いてありましたが、私がもっと知りたかったのは、「国籍不問」かどうか。確認したところ、日本語が通じれば、参加できるとのことでした。
中学生のころにアニメのおかげで神道に興味を持つようになりました。大学留学や日本で文化交流などの仕事をするようになってからは、より深く、より学問的な興味を持つようになりました。多くの神社を参拝するのは楽しいですが、信仰というより、尊敬を感じます。
巫女体験は、スピリチュアルな体験として興味を持ったというよりは、学問的な好奇心と、昔アニメで見た巫女さんのヒロインのようになりたいというちょっとした憧れから参加の申し込みをしました。そのような願望に気恥ずかしさを抱きながらも、せっかく参加させてもらったのだから、真面目に取り組もうと決心しました。コミカルなイラストを描く私は、実はとてもシリアスな人なのです。
そのため、その日の最大の研修のひとつが「笑いの実践」であったときは、とても驚きました。
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枚岡神社と「お笑い神事」の背景
「笑いの実践」を説明するため、枚岡神社についてもう少し説明をします。
大阪府の枚岡神社は奈良県の春日大社と同じく、本殿が4棟あり、4柱の主祭神を祀っています: 天児屋根命(あめのこやねのみこと)、比売御神(ひめみかみ)、経津主命(ふつぬしのみこと)、武甕槌命(たけみかづちのみこと)。天児屋根命と后神である比売御神は、768年に春日山本宮の峰に影向され、現在の春日大社に祀られたことから、枚岡神社は「元春日(もとかすが)」とも呼ばれています。
天児屋根命とは中臣氏(後藤原氏)の祖神だと伝えられています。古代の日本において、中臣氏は最初に神事・祭祀をつかさどった中央豪族でした。
「天岩戸」についての神話は聞いたことがあるのではないでしょうか。天照大御神(あまてらすおおみかみ)は、弟の須佐之男命(すさのおのみこと)のいたずらにお怒りになり、天の岩戸に隠れてしまわれたため、世の中は真っ暗になってしまいました。天照大御神の気を引くために、その他の神々は踊ったり、手を叩いたり、歌を歌ったり、大声で笑ったりしました。好奇心旺盛な天照大御神は、外の様子が気になり、ようやく顔を再び見せられたのです。これが初めてのお祭り、「天の岩戸開き神事」だったというわけです。天児屋根命はこの神事に、祝詞を奏上する重要な役割を勤めました。
枚岡神社では、毎年12月23日にこの「天の岩戸開き神事」を再現する神事を行います。「注連縄掛神事(しめかけしんじ)」、通称「お笑い神事」です。災いを祓い、福を招く笑いの儀式で知られています。「あっはっは」という大きな笑い声から、やがて腹を抱えて笑うことによって、神々や先祖に楽しい雰囲気を伝え、神話の中のように天照大御神に、一緒に遊ぼうと誘うのです。
枚岡神社の巫女体験研修
巫女体験についてもう少しご紹介をします。
体験は初級、中級、上級(および指導者の最上級)に分かれています。現在までに日本全国(および日本国外)から1000人強の女性が参加しており、上級に参加された最高齢の参加者は90歳を過ぎておられました。私が初級に参加した日も、「お笑い神事」に衝撃を受けて関東から参加した女性もいましたし、枚岡神社でこのような体験ができることを何年も前から知っていたけれど、まだ参加の機会がなかったという女性もいました。この研修は毎年すぐに定員に達する傾向があり、私自身も4月の体験のために前年の11月に申し込みをしていました。
ヘアスタイルはシンプルに、アクセサリーやマニキュア、香水は避けるなど、事前に準備の仕方についての指導があります。真剣に取り組んでほしいという気持ちが伝わって来る一方で、コスプレ体験のためだけに申し込む人も多いだろうとも思いました(実は私も楽しみにしていた側面ではありましたが…)。それもあって、私の外見では目立つから、ただ衣装を着るためだけに参加したのではないことをアピールしなければと緊張しました。せっかくの貴重な機会を、無駄にしたくなかったのです。
巫女体験研修当日の朝、集合写真を撮るために宮司さんの隣にひざまずいていたときの私の緊張感、そして、宮司さんが私の耳元で突然「あっはっは!」の大声を上げた瞬間の驚き、想像がつくでしょう?!
笑うことがその日のテーマとなりました。宮司さんは、会話の口調と講話の中で、「お笑い」の目的のひとつは、精神的な悟りであれ、単に酸素を余分に使うことであれ、自分の心の天岩戸を開くことである、という点を強調しました。
拝殿で正式参拝と集合写真を撮った後、境内の摂末社や大阪府最古の梅園を見学しました。私は昔から神社の見学ツアーで通訳し、そして今の仕事柄、神社仏閣の多言語解説文を作ることが多いので、このような細部にとても興味を持ちました。しかし、仕事のように細かくメモを取る必要がなく、ただただ楽しく見学することができました。
その後、宮司さんから講話を受けました。この講話の中で、大和言葉の勉強ができました。昔、普通の日本語の単語として習った言葉を、新しい目で見るようになりました。例えば、「桜」。「サ」は「稲霊」で、「クラ」は「座=依り代」だから、桜を花見することは五穀豊穣を願う神事だということ、大変印象に残りました。
また、正しい参拝作法を学びました。立ち方と座り方のお辞儀と拍手を習い、最上級レベルの巫女体験研修を経たご奉仕たちが姿勢を整えてくれました。基本的な二礼二拍手一礼のやり方は聞いたことがありましたが、武術や茶道の礼儀作法と同じように、手を置く位置や動作のタイミングなど、より細かいポイントがたくさんあります。神社に参拝する外国人として、「これでいいのかな?」という疑問は常にあったので、何が正しいのかを正確に教えてもらえたのは心強かったです。
午後の大半は、拭き掃除と御殿前の大祓詞奏上と瞑想、そして終了式典に費やされましたが、メイン・イベントは、「笑いの実践」でした。
「笑いの実践」
止まらずに20分、笑ったことがありますか?
シリアスな人にとっては、修行です。親しい友人とお腹を抱えて笑うのは楽しいですが、「笑え」と命令されるのは、「くしゃみをしろ」と命令されるのと同じくらい不自然な感じがします。
宮司さんのリードで、「あっはっは、あっはっは」という笑い声のようなお経を唱えました。中途半端に声を出すと、かえって変な感じになってしまいますので、とにかく全身全力で笑い、「あっはっは、あっはっは」を唱えました。初級レベル参加者の中には、「お笑い神事」の経験者もいたので、慣れるのが早く、他の参加者も時間の経過とともに、よりリラックスした様子になりました。そんな中、ご奉仕たちは、見たこともないような陽気な表情を保っていました。後でご奉仕たちが教えてくれたのですが、中、上級研修ではもっとお笑いの時間が長くなり、最上級では60分にもなるそうです。
20分も「あっはっは」を唱えているとすぐに飽きてしまうので、だんだん動きを加えていきました。最初は手を叩き、次に手をつないで前後に振った後、一方向に踊り、しばらくすると、絶え間なく続く「あっはっは」の掛け声とともに庭を一周しました。近くに住んでいる人たちは慣れているのでしょうか、庭の虫たちは私たちが作った音波をどう思っているのだろうかと考えざるを得なかったです。その後も、両手を上げて足を蹴りました。幼稚園の頃に戻って無心に踊ったり歌ったりしているような心地よさもありましたが、幼稚園の子どもたちが私たちのように長く続けられるとは思いません。修行はしっかり続きました!
本心から笑っていなくても、酸素を大きく吸って体を動かしている間に気づいたのは、日本の生活ではカラオケ以外で大きな声を出す機会が少ないということでした。だからこそ、この機会を楽しんでいました。
私はこの一日の巫女体験研修をとても真剣に受け止めるつもりで臨みました。他の参加者の多くもそうだったようです。ご奉仕の方々がおっしゃったように、私たちは皆、一日の始まりにはとても緊張しているように見えたのに対して、体験が終わるころにはすっかりリラックスした笑顔になっていました。
シリアスな私は、腹を抱えて笑うことはできませんでしたが、すっきりした気分、そして達成感を得ることができました。巫女体験研修の一日の流れを想像したとき、「心の天岩戸を開く」ような感覚は、一日の終わりの瞑想のときに訪れるのではないかと期待しました。しかし、巫女が神々に仕えるものであるならば、「お笑い神事」は神々を楽しませる、より有意義な方法であることがわかりました。
中級レベルに進みたいと伝えたら、周りの人から歓迎されたので安心しました。大自然での修行、知識を深めたりすることは非常に魅力的ですので検討中です。しかし、「お笑い」は上達できるのでしょうか?やってみないと分かりません!
今回のスポット
枚岡神社
住所:大阪府東大阪市出雲井町7番16号
枚岡神社公式サイト
巫女体験についての案内