在日イギリス人が語るイギリス紅茶の本当のところ
お茶シリーズの一つとして、今回はイギリスのお茶についてご紹介できればと思います。そして、イギリスと言えば、紅茶ですね。今回の記事に、イギリスでの紅茶の歴史、現代のイギリスに住む人の習慣、紅茶の「正しい作り方」、社会的の重要性等について見ていきますので、まずは紅茶を淹れてから一緒に紅茶の世界に入ってきましょう!
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大雑把な紅茶の歴史
紅茶は、1600年に創設されたイギリス東インド会社(East India Company)がイギリスへ輸入しました。当時、とても高価だったため、王族や貴族しか飲めませんでした。チャールズ2世(1630年~1685年)の妻、王女キャサリン・オブ・ブラガンザ(1638年~1705年)が王族と貴族の間にお茶を飲むのを習慣にしたと言われています。
1717年に、トーマス・トワイニング氏 (Mr Thomas Twining)がイギリス初の紅茶専門店を開きました。こちらの紅茶専門店の一番の特徴は、女性(レディ)がようやくお店で自分で紅茶を購入することができるようになったことです。これまで、レディが1人でカフェ(コーヒー専門店)に入ったら、自分の品位に傷がつくことになってしまうため、男性の使用人が代わりにお店に入って購入する必要がありました。(なぜ品位に傷がつくことになるかは今回ご紹介できませんが、こちらもイギリス歴史、社会と文化の一つの奇妙なところかと思います。ご興味のある方はぜひ調べてみてください!)
したがって、トワイニング氏のおかげで、レディは安心してこの紅茶専門店に入ることができて、お茶会等も楽しめるようになりました。また、イギリス領インド帝国の存在と、トワイニング氏の紅茶専門店が大成功したことで、その後国中に紅茶専門店が開かれ、一般人でも紅茶を飲む習慣ができたと思われています。
トワイニング氏へ感謝しますね。ちなみに、1717年に開創されたトワイニング氏の紅茶専門店は今でも大繁盛なので、ロンドンへ行かれる際は寄ってみてはいかがでしょうか?
現代のイギリスの人の紅茶飲用習慣
現代のイギリス人も、紅茶がとても好きです。しかし一つだけ言っておきたいことがあります。「イギリス人」だけが紅茶が好きというわけではありません。厳密に言いますと、「イギリスに住む人」が基本的に紅茶が好きになるのです。私の祖父、大叔母、大叔父はみんなイタリア人で、祖母はジャマイカ人、もう一人の祖母はアイルランド人、叔母は中国人、いとこ等はイギリス、アラブ、アイランド、デンマーク等の血を引いている人たちです。とても国際的な家族ですが、イギリスは国際的な国ですので、珍しいとは言えないでしょう。ですが、この国際的な家族が集まるとき、必ず紅茶を飲みます。(イタリア人の大叔母一人だけは時間を問わず、イタリア人らしくエスプレッソを飲みます。)私の夫も、イギリスに訪れる前まではずっと日本茶かコーヒーを飲んでいましたが、一週間私の家族とイギリスに滞在して、帰ってきてからほとんど毎日紅茶を飲んでいます。不思議ですね!したがって、今回の記事にて、「イギリス人」を書きますが、本来の意味は「イギリスに住む人」です。
続いて、現代のイギリス人の紅茶飲用習慣について調べてみました。イギリス国内の様々な調査結果を拝見して分かったことを以下にまとめました。
- 女性は男性より紅茶を淹れる習慣がある
- 正しい作り方がある
- 紅茶(black tea)は「牛乳なし」と解釈される一方、白茶(white tea)は「牛乳あり」と解釈される。“Tea”は基本的に紅茶+ミルクを意味するが、一般的な礼儀として、「牛乳や砂糖、いかが?」と皆聞く(イギリスの普通の言い方:How do you take your tea?)
- 冷たい紅茶は考えられない、若しくは恥じるべきもの
- ビスケットやケーキと一緒に紅茶を飲むことが多い
- 決めた時間帯に紅茶を飲む習慣がある(朝起きる時、11時、3時)
- 紅茶のブランドランキングは、上から順番にTetley, PG Tips, Yorkshire TeaとTwinings
- リーフ(茶葉から)入れるのではなく、ティーバッグを使うのが一般的になっている
紅茶の「正しい」作り方があるらしいですよ~
イギリスでは、スコーンについて論議されるように、例えばスコーンの発音やスコーンにまずジャムかクリームをどちらをつけるかといった論議と全く同じように、紅茶の正しい作り方は常に議論になっています。議論していることは、先に牛乳を入れるか、後で入れるかについてです。たまにお茶の作り方に非常に熱心な人がいますので、もしイギリス人と会話している最中にこれらの話が出てきたら、用心深く話を進めてください。
専門家の話によりますと、牛乳を先に入れる習慣は歴史に基づいていて、高級な陶磁器がお湯の熱さで割れないように先に牛乳を入れると言われています。どちらを先に入れたって味が変わらないと宣言している人もいます(あなたもそう思っていらっしゃるかもしれません)。だがしかし!これは大間違いです。
牛乳を先に入れることによって、味が確かに変わると専門家が認めています。自分のこだわりの淹れ方で作ってもいいですが、ゲストにお茶を淹れる際は、正しい淹れ方を確認しておくことが礼儀正しいですね。また、自分の家族や友達のこだわりも覚えておくことが一般的です。でなければ、あなたがせっかく淹れた紅茶が「まずい」と思われるリスクがあります。
色にこだわりもあります!
牛乳に関するもう一つの懸念点は量です。イギリス人は紅茶の色から美味しさがわかります。牛乳を入れすぎてしまうと、味が弱くて、紅茶が冷たくなって、美味しくなくなってしまいます。牛乳が足りないと、コーヒーに近い色になって、これも望ましくないでしょう。そのため、グーグルで「perfect tea colour」(完璧な紅茶の色分け)を画像検索すれば、参考になるものがたくさん出てくるはずなので、紅茶を淹れる際は参考にしてみてください。
イギリスでは、紅茶をお菓子・スイーツと一緒に?
アフタヌーンティーを知っている方は少なくないでしょう。アフタヌーンティーは一般的に、午後3時から4時の間に開かれる食事会で、紅茶、サンドイッチ(普段のフィリングは卵、キュウリ、サーモン、ハム等)、スコーン(イチゴジャムとクロテッドクリームと一緒に)、と上段に小さなケーキが提供されます。
アフタヌーンティーやハイティーは少し特別な会のためなので、美味しいものたくさんあるのは当たり前かもしれません。(買い物やデートなど、外にいる際は、アフタヌーンティーの気分を真似したい場合にはケーキ(ビクトリアスポンジ等)を食べるといいでしょう。)だが、朝の紅茶、11時の紅茶、午後の紅茶、寝る前の紅茶にケーキなどは食べません。しかし、biscuits(固いクッキー)を食べる人が多いです。
Biscuitsのことですが、多くのイギリス人はbiscuitを紅茶につけて食べます。紅茶につけるだけと侮ってはいけません。つける時間が1秒でも長すぎると、biscuitが紅茶の熱さによって砕けて、マグカップの下へ沈んでしまって、飲み終わるまでぐちゃぐちゃになったbiscuitsをずっと飲まざるを得ない運命に辿り着きます。
また、紅茶に一番相応しいbiscuitsはどれなのかについて議論があり、イギリス人はここでも激しく口論することがありますので、自分自身のご意見を述べる際はご注意ください。
私の家族、親友、イギリスに住む人にとって、紅茶は何?
イギリス人は子どものころから紅茶を飲む習慣を覚えます。そのため、イギリスに住む多くの人は紅茶の香りや味で子どものころ、親や家族等を思い出して、それで気分もよくなります。私の場合、3歳の頃、学校に行く前に居間でテレビを観ながら温かい紅茶にbiscuitsをつけて食べていることを今も覚えています。とても心地良い思い出です。
中学校では、11時頃の休憩に紅茶を購入できたり、15歳から授業中に先生が紅茶の飲みたい人のため紅茶を淹れてくれたり、悩みやストレスにやられたとき、先生や医務室の看護師がまず紅茶を淹れてから悩みを聴いてくれたりしました。
家族や友達が家に訪れる時の飲み物は必ず紅茶です。色々なお茶(日本茶、中国茶、ハーバル茶、白茶など)はあるのに、紅茶がないと、お客はがっかりしてしまいますので、必ず紅茶も買っておかないとだめです。子供から大人まで、誰でも飲める、誰でも楽しめる飲み物なので、みんなで集まるときは紅茶を飲みます。世代を超える飲み物です。
他人や自分が落ち込んでいるとき、まず紅茶です。「紅茶は人生のすべての問題を解決できる」と、イギリス人はよく言います。お湯を沸かすと、その水蒸気と同じように悩みもストレスも浮かんで消えていく。そして温かい、良い思い出がたくさんある紅茶を飲みながら愛する人たちと色々な話したり、笑ったり、泣いたりします。紅茶はイギリスに住む人にとって、同情、友情と愛情の表現の一つだと思います。そして、もちろん、紅茶は美味しいです。