「日本語お上手ですね」と言われ続けた外国人の僕の本音
白人の僕は日本に住めば、住むほど決まり文句のように同じ質問やコメントを受けるようになりました。初対面ではもちろんですが、何回も会っていた方にも聞かれます。質問をしてくる方の中では中高齢者の方が多いけれども、幅広い年齢層からこのような質問がきます。
「どこからいらっしゃいましたか?」
「日本に住むのはながいですか?」
「日本はすき?日本女性はどうおもう?やっぱり好きかい?」
「日本のどこに住んでいる?国に帰りたくないの?」
そして、話の中でいただくコメントも決まっています。「目が綺麗ね」とか「トム・クルーズと似ているじゃない」などの見た目のお世辞をよく聞くけど、「日本語が上手ですね」はもっとも多いです。その一つのセリフを受けとめる気持ちは、僕が日本語を勉強続けた年数と共に変わりました。
まず、僕の日本語勉強歴を簡単に説明します。2008年、高校生の時に、青森県つがる市に初めて日本に来ました。人生の方向性を変えた2週間でした。出身地のメイン州ブランズウィック市の隣のバス市はつがる市と1994年に姉妹都市になり、交換留学などが行われるようになりました。そして、2008年にバス市で交換留学を応募した学生が少なかったため、隣の市の学生も参加できるようになりました。青森県での2週間は僕に強烈な印象を残し、僕はアメリカに帰ってきてから熱心に日本語を勉強し始め、大学に進学した時に日本語専攻をし、日本でも日本語専門プログラムに参加しました。
初めての弓道体験
青森に行っていた時に言われた覚えがないが、日本語を独学で勉強し始めてから、その旅にであった友達に日本語の挨拶「コンニチワ、ワタシワフランクデスー」と言えた時に、「あ、フランク、日本語上手になっているね」など言われた思い出はあります。その時そのように言われてくれたおかげで、自信の元になり、もっと勉強したくなりました。
2013年にまた日本での留学ができ、早速空港で「日本語上手ですね」と言われました。自分自身もある程度話せるようになっていると思い、その言葉が自分の中で日本語が上達している証拠になりました。(実際に上手かどうかを確認したい方は「YOUは何しに日本へ?」 2014年3月3日の放送版で確認ができます。)しかし、留学中「日本語上手」的な発言を聞き続けると、本当に自分が上手に話せているかどうか不安が溜まり始めていました。
演歌を歌わされました
上級レベルのクラスを受けている僕と初級で初めてアイウエオを習っている友達にも同じく「日本語が上手ですね」と言われると、明らかにレベルが違うのに、褒め言葉は同じというのは気持ちが込められた評価ではないと感じるようになりました。同級生も同じように感じていて、我々の間に「日本語上手」が英語の動詞になりました。例えば、「I was talking to the store clerk and got 日本語上手ed…」または「Right after making a mistake, the hotel staff 日本語上手ed me.」この環境で日本語勉強が続き、ついには、この言葉はもう意味のないお世辞だと認識して、聞くたびにうんざりするようになりました。しかし、僕は日本語の勉強を続けました。
2014年に大学を卒業し、英語の教師として日本で働き始めました。しばらくお金を溜めていて、2016年4月に退職し、麗澤大学別科日本語研修課程(現在廃止)に入学しました。一年を達成したところで、2年間の勉強のために貯金したお金を使い切っちゃったから転職活動をはじめ、2017年8月に種子島に行くことになりました。
種子島には、15,000人の人口に対して、外国人は数十人しか住んでおらず、僕と同じ英語圏の方はたった5人でした。ほぼ日本人ばかりと交わる生活をはじまり、だんだん「日本語上手」と言われなくなりました。島社会が村社会のようで、日本語を話している謎の外国人から、少々変わっている日本語を話す「フランク」と認識されるようになったのではないかと思っています。ですが、10ヶ月後にまた転職をし、東京に戻りました。
種子島での洗濯の日
東京に戻ってきた以来、「日本語上手」と言われたら、どうしても頭の中でシニカルな思いがうまれます。「もちろんですよ。日本語以外なんか話せるのか?どんだけ俺が頑張っていたかわかるかい?俺の勉強の8年間、日本の生活の7年間の苦労を「日本語がうまいね」でまとめられると思うのか?なめんなよ!」と怒りが出ると共に「何も考えていないよ〜単純に話したいだけで、日本語でコミュニケーションを取れるのは嬉しいだけですよ〜」と優しいセリフも出ます。疲れがひどい時以外は、なるべく裏の怒りを見せないように頑張って、「まだまだですよ」的な適当なことを言い、次の話題に移動するようにしています。(正直なところ、自分の日本語はまだまだだと思っています。そう思っているからこそ、最初からずっと同じ褒め言葉ばかり言われていることは自分の中で初級から何も上達していない証拠になります。)
多分、他の日本語にプライドが高すぎる外国人しか同感しないかもしれませんが、「日本語上手」的な発言は要注意だと思います。日本語のレベルによって、日本語の上達するモチベーションを上げることも下げることもあり、具体的に何を指差しているかがわかりにくいです。そして、より細かい褒め言葉を言われるとそれなりの達成感があります。
例えば、先日、お客さんと打ち合わせが終わった際に会社の先輩から「最近、本当に例えをいうのが上手になりましたね。」とT先輩にいわれました。この誉め言葉は大変嬉しかったです。「日本語上手」のような抽象的な褒め言葉ではないし、もっと日本語でのコミュニケーションを上手にできるようになりたくなりました。また、電話での対客や予約をしている時に名前をいうまでに「日本人だとおもいました!」のようなことを言われたら、嬉しいです。