久留米絣の藍染体験で自分だけのグラデーションを想像
今回は福岡県にある久留米絣の織元、山村さんのを訪れました。藍染という伝統的な染色技法は日本だけではなく、台湾の人々にとっても親しみがある手仕事なので、ここの工房に行く前に、日本と台湾の藍染の違いについて色々考えたのですが、実際に藍染体験を通して、久留米絣の藍染について深く興味をもち、自分の理想的な藍色に出会うことができました。
福岡県南部の筑後地方一帯で製造されている久留米絣は、化学染料×機械織りと藍染×手織りに区分され、山村さんの藍染絣工房は伝統的な藍染×手織り製法を守りつつ、新たな模様を考案し、美しい藍色のグラデーション、モダン要素を融合した幾何学的なデザインも作り続けています。
工房入口に到着すると、水通しをした久留米絣が干されている様子が見えます。深みがある藍色を楽しみながら、これから製作する自分の藍染への想像も膨らみます。
「子供の頃に染め作業を手伝う際に、染料の甕に落ちたことがあるので、足元に気を付けてね〜」と山村さんが語りながら、いよいよ藍染の体験が始まりました!
蒅(すくも)という青い成分が含まれる葉は藍液の原料となります。山村さんの工房では、家族と蒅を栽培していますので、春〜夏の間に工房を訪れると、近くに青々とした藍畑を見ることができます。
蒅の葉と、灰汁、糖分などの成分を混ぜることで液体のpHを調節し、それから微生物を働かせ、藍液を発酵させます。冬には、一定の温度を保つために土中の火床で火を焚きます。これは、藍液の温度を20〜25度に維持するためだそうです。
また、季節や気温によって発酵時間も異なり、毎日藍液をチェックしながら調整しなければなりません。その藍液を作る一連の工程は藍建(あいだて)と呼びます。
藍染の藍色は染める回数によって濃淡が決まっていくもので、1回染めただけでは、深みのある色は生まれません。この工房では、平均30〜50回程度に染め重ねます。
それぞれ違う甕で藍染めの鮮度(濃度)が異なるため、薄い方から濃い方へと順番に染め重ねます。甕の順番と染め方を教えてもらったら、自分のペースで回数を決めていきます。時には想像力に任せたり、直感に頼ったり、藍染は科学反応で色合いが生まれるので時には自由に任せてみたり、あっという間にこのような純粋な時間を過ごしました。
何度も布を広げて藍染の液体に浸けたり、絞ったりすることで、藍は空気の酸素に触れて色が変わり、布も茶色から徐々に藍色に変化します。また、染色時間と布を持つ位置を調整すれば、自然なグラデーションが生まれます。色が定着して洗っても落ちにくくなるまで、私の場合は20〜25回ぐらい染め続けました。
染めた後に水洗いすると、藍色のグラデーションが明確に見えるようになりました!ちなみに、子供の頃に小学校で藍染をやったことがありますが、当時台湾の藍染は絞り染めという染め方が主流だったので、今回のような回数を分けて段染め的な染め方は初めての体験でした。藍色のグラデーションがとても繊細で美しく、不思議な気持ちが湧いてきました。
工房の休憩処に戻り、染めた布をファブリックパネルに固定する作業を終えると、自分だけの藍染作品が完成です。
藍染を含めて手仕事の世界は奥深く、伝統や現代の技法を応用しながらも、抽象的な感性と考え方を生かして作品に表現することが大切だと思います。これからも深掘りしていきたいです。今回の体験を通じ、自分の部屋に藍色を添えることができて、嬉しい気持ちでいっぱいです!
藍染絣工房
住所:福岡県八女郡広川町長延241
時間:10:00~17:00(日曜日定休)
アクセス:九州自動車道広川インターから車で約10分