鬼ゆかりの地へ。アメリカ人の私にとって本当に怖かったのは…Part 2
こんにちは、アメリカ出身のブリタニーです。今回は好きな「鬼」のトピックと、それにちなんだマニアックな旅を紹介します。前半の続きとなります。
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マニアックなパワースポット
前回のPart 1で紹介した通り、幼なじみのMちゃんは運転ができるから、ずっと行きたかった京都府の「日本の鬼の交流の博物館」へやっと行くことができました。しかし、もっと昔から、もっと気になっていたスポットは鬼のボス酒吞童子(しゅてんどうじ)が住んだ山ではなく、ある者の首が埋められているという「首塚大明神」でした。
時間はもう18:00を過ぎていました。Mちゃんは長い運転で少し疲れていましたが、私と同じく、鬼退治伝説や妖怪の話や日本の不思議が大好きです。また、首塚大明神の由来のおもしろさにユーモアを感じました。
源頼光は大江山で大変な戦いをぎりぎり生き残って疲れていたはずだったのに、酒呑童子の大きくて、まだ生きている首を平安京まで持って帰ろうとしたあげく、都の西の老ノ坂峠で、「あんな汚いものを都に持って入るな!」と言われたそうです。
ある伝説によると、酒吞童子自身が起こした罪を後悔して、都の西側の入口を守ると約束したそうです。
本物の鬼を信じない私たち二人にとっておもしろい話にすぎませんが、神社に行く時には異文化を尊敬して、外国人観光客として礼儀正しくお参りすることを意識しました。また、この神社は首より上の病気を防ぐと言われていますから、Mちゃんも私も片頭痛を防ぐために鬼に助けを求めようと思いました。
首塚大明神へのお参りは、数か月前から計画を立てました。場所は、国道9号線の老ノ坂トンネルのすぐ近くにあることが分かりました、地図やネットで何回も見たことがあったから、神社は小さくて、駐車場のすぐ隣にあることがわかっていたので、お参りにはそれほど時間がかからないはずでした。
「トンネルを出てすぐ右だよ」と、私も、ナビも同時にMちゃんに案内しました。
が、右に曲がる場所はありませんでした。
ナビや携帯地図で確認してみると、通り過ぎてしまったことが分かりましたが、トンネルの近くに右に曲がるところは全く見えませんでした。ナビがすぐ、次にUターンできる場所を含めた新しいルートを案内しました。
「車が多かったから見えなかったかな?」
「いや、あったはずの場所をしっかり見ていたから、ないと思う」
「ナビはもしかして裏道を案内している?いや、これは曲がるはずだった場所。他に道がない」
「だって、道がなかったよ」
「でも、地図にちゃんと反映しているよ、絶対に何か見逃した。もしくはなくなった?」
「…ごめん。行く方法は、ないと思う」
Mちゃんは私がどれだけ好奇心を持って、行きたがっていたかを知っていたので、気の毒そうに引き返そうと言いました。私も曲がるところが全く見えなかったのに、そのまま諦めるのが悔しくて、もう一度だけ試してみることをお願いしました。
渋滞も心配だし、周りもどんどん暗くなっていましたが、Mちゃんは私のわがままを許してくれました。やはり、幼なじみとの冒険は最高です。
触れてはいけないもの
Uターンをして、トンネルに向かったら左から一瞬、曲がれる場所がありました!
気づくとすぐ曲がらないといけない細い、木に隠れていた坂道でした。しかし、曲がってすぐ周りの世界があまりにも急に変わってしまって、取り返しのつかない感じがしました。前に進むしかできない道に、「24時間監視カメラ」といった不快な言葉が書いてある看板を見たような気がします(過ぎてしまいましたので詳しく読めませんでした)。
あっという間に興奮は後悔に変わりました。
シリアスな雰囲気で、トラブルになったらどう謝ればいいかをすぐ語り合いました。とにかく安全にUターンできる場所まで進むしかありませんでした。うねうねと続く、穴だらけの凸凹道の右側に、落書きまみれの古びた小屋が並んでいて、道はナビ通りに曲がり続けました。2分ぐらい道に沿って走っていたら民家が数軒あって、ナビが約束した通り、小さな駐車場もありました。
「もしかして、私たちみたいな観光客がここにお邪魔するのがうんざりだからあの監視カメラを?」
「いや、でも、地図に反映している道だし、あそこに蜂蜜を売っている屋台もあるから、近所以外の人は来ると想定しているだろう…ね」
「そうだね!別に、悪いことをしたわけではないよね!」
「ね!」
「大丈夫!ほら、首塚、すぐそこにあるよ!ネットの写真通り」
「だよね。神社は、近所の人だけが行ける場所でもないからね」
「そう、そう!」
「とにかく早く行こう」
「そうだね。邪魔したくないから」
と、少しはらはらした気持ちでお参りを始めました。
首塚は、小さな丘の上にある、小さな社だからお参りするのはあまり時間がかかりません。丘のふもとに石鳥居とその隣にはお供え物がありました。そして、石階段と木の根が張った参道を通って丘を上ります。真昼に行っても木の影で暗くて、神秘的な、ミステリアスな雰囲気です。不気味とも言えます。
うるさいユーチューバーなどが取材しに行ったら、絶対にうれしくて盛り上がってしまって、近所の人にご迷惑をかけるに違いないと感じました。私はこのような神秘的な神社に行く度に、静かにわくわくとする気持ちをを抱いてうっとり見惚れますが、今回は畏怖より、侵入者が気配を消そうとするような恐怖を感じました。
私にとって神社にお参りする礼儀の一つは、雰囲気を味わうだけでなく、しっかり学べることです。異文化を尊重するため、それは基本だと思います。なので、社内に短い看板があれば読む、長ければざっと目を通します。日本語を読めないMちゃんは、とにかく作法を守ります。
丘の上に大きい石看板があって、書いてあったのは酒吞童子が退治されて、切り落とした首はここに埋められたと、平安時代に疫病があったという神社の由来でした。そして、看板の横には、石鳥居の隣に置いてあったのと同じお供え物と、ラミネートされた手書きの案内がありました。
これは気になりました。ペットボトルの中の透明液体は、神社によく見られる日本酒(酒吞童子の大好物の一つ)だと際しました。しかし、小さいガラス器の中の黒ずんだ色の液体は、神社で見たことがありませんでした。手書きのメッセージを読んでみました。
「酒吞童子様蘇って下さい 下にある血は生血で御ざる これを触れた者は触わるべからず 悪裁する者 酒呑童子様から先祖未代に至るまで呪い殺される」
ハッと息をのみこんで、大きく後ろに下がりました。
「何?何かあった?」
「触れちゃいけない!血!血だ!」
「ええ!これ?」
「うん、なんだか触れたら呪われるよって書いてある」
「これ、古いけど、本当の血だと思う」
「早く参拝して行こう。静かに!」
お賽銭箱に硬貨を入れ、二礼二拍手、心変わりした酒呑童子に片頭痛を防ぐようにお祈りして、一礼して車に戻りました。
シーンとしながら、通ってきた細道をまた通って、渋滞の国道へ戻り、監視カメラの看板をしっかり読もうとしたのに裏からは読み取れませんでした。プレートの情報を撮影してしまったので後で罰が来ることを恐れました。
「なんだか…」私はようやく言いました。
「今までは色んな、こんな感じのスポットを回ったけど、ここだけは他の人におすすめしたくない」
「うん。わかる、わかる」
「あの血は多分、全然関係ないと思う。悪趣味の人がかってにやった行動で、実は、神社に持って入っちゃいけないのよ、生血なんて」
「そうだね、それはびっくりした、はは!きもかった!」
「そうだよね!きもかった!でも、何よりもあの道…」
「そうだよ。あの監視された道…」
「…来ないように他の観光客に存在を知らせたくないよね」
「そうだね。絶対に気になって探してくる。違反切符、来るかな…」
「来るかな…」
距離感によっての安心
鬼は存在する生き物だと信じないから距離感があって、怖いものをかわいいと思える余裕があります。しかし、いたずらではない限り、鬼の存在を信じる人もいるのです。私の信じることとは違うものを尊重したいけれど、神社の礼儀に反する行動を、どれだけ尊重すればいいか迷うところです。
一番怖かったのは違反切符が来るかどうかということでしたが。
あの日から1年が立ちました。違反切符は来ませんでした。振り返ってみればあの監視カメラはたぶん、小屋の落書きを防ぐためでした。この記事を書くためにMちゃんと笑いながら思い出話をして、そして日本人が書いた首塚についてのブログを少し目を通しました。皆同じ道を通ったそうなので、私たち外国人観光客はやっと安心できました。
そして、例のお供え物に関して、他のブログの写真にはほとんど写っていません。私たちのお参りの2週間後に投稿されたブログだけに、違う表現の手書き看板と一緒に、同じお供え物が置いてあったことが分かりました。そのブローガーのお連れ様はその場で恐くてお参りをやめたらしいです。私はその記事を見て、なんだか安心しました。やっぱり日本人もこの行動がおかしいと判断するのだ。外国人だから理解できない深い意味は特になかったということが大体分かっていたのですが、これではっきりしました。
しかし、そのおかしい行動をした人は、恐らく社会ののけ者でしょう。同じくのけ者だった鬼のボスの蘇りを願うのなら、寂しい人に決まっています。心を込めて行った行動は私もMちゃんにとっておもしろい思い出に過ぎませんでしたが、その方の事はどうしても鬼と同じく、かわいそうに思います。
今回のスポット
首塚大明神
住所:〒610-1106 京都府京都市西京区大枝沓掛町
※お参りの際、静かに、礼儀正しく行きましょう。