鬼ゆかりの地へ。アメリカ人の私にとって本当に怖かったのは…Part 1
こんにちは、1回目の投稿をさせて頂きます。アメリカ出身のブリタニーです。昔から日本の奥深い文化や、クールジャパンのトピックに対して強い興味を持っていて、いわゆるマニアになりました。
従って、今回は好きな「鬼」のトピックと、それにちなんだマニアックな旅を紹介します。前半と後半に分けています。
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幼なじみと異文化発見
鬼は伝説上の生き物だから、怖くありません。むしろ、忍者や芸者と同じレベルで日本のシンボルだから、日本の文化を異文化として楽しむ人は愛着を感じています。少なくとも私と幼なじみのMちゃんにとっては、そういう感じがします。
「オ、ニ!オ、ニ!オ、ニ!」
と、三十代の私たち二人が車の中でチャントを唱え、京都府福知山市にある「日本の鬼の交流博物館」へ向かいました。
私は日本の文化を専門的に勉強していますが、Mちゃんは昔から趣味としてアジアの文化を楽しんできました。一般のアメリカ人より知識が深いから、神話や歴史の背景を少し説明すれば、色んなトピックを興味津々に鑑賞してくれます。また、一緒に旅行できる機会があるたびに、私のマニアックなわがままもよく聞いてくれます。今回は、大江山まで運転して、一緒に盛り上がってくれました。
多くの日本人の友だちも車でしか行けないマニアックな場所に連れて行ってくれて、一緒に興味深い体験をしたことがありますが、同じ外国人でなければ、一緒に盛り上がることは少し恥ずかしいと思う時もあって、感情を控えてしまいます。
私の世代のアメリカ人はグローバル精神を持つように意識しているから、「文化の盗用」に対して敏感になっています。異文化を楽しみながら尊重することはなにより大事という価値感があるから、「自分のものではない」ということを意識し過ぎることもあると思います。
日本人の友だちはそれほど気にしていないと思いますが、「自分の文化」に対しての知識を深めることと、「異文化」の発見は距離感が違うので、同じテンションになりにくく感じます。
しかし、Mちゃんとは幼なじみだからこそ、テンションはいつも10倍になります。
「オニ」のチャントをする前、私は大江山の鬼伝説を彼女に読み上げました。平安時代に、鬼のボス酒吞童子(しゅてんどうじ)がこの山に住んで、源頼光という武将と、頼光の部下たちは酒吞童子を退治したということが基本だけれど、酒吞童子の由来に関してさまざまな伝説があります。
その伝説はおもしろくて、時にはおかしくて、Mちゃんとよく笑いました。酒吞童子は本当の人物ではないから、距離感を感じてユーモアを見い出します。怖くないから、鬼のボスをからかうことは何も悪くはありません。
日本とそこに生まれた鬼
もしかして外国人だからこそユーモアを見いだすのかもしれませんが、大江山のあちこちにかわいらしい鬼の像が観光客を招いて、楽しそうにお酒の飲みっぷりがよさそうなポーズをしています。現代の日本人にとっても、遠い存在だからこそ、節分などに行事の深い意味を考えずに豆を楽しくまいているでしょう。
日本の鬼の交流博物館曰く、鬼は昔、人間の災いと幸せを支配する神に近い存在と考えられていました。牛の角と虎の皮で飾られた鬼は日本の文化なのかもしれませんが、世界中に、不幸は「魔なるもの」の仕業と信じることが多くあります。自分の不幸をよその者のせいにすることは、人間的な特性でしょう。
日本の場合、このような「魔なるもの」の伝説の広がりとともに、鬼は人間に不幸を及ぼしたり、人間の心に潜む闇から生まれたり、「悪」という存在として発展し、退治すべくものとなりました。
「鬼退治」をテーマにした民俗芸能は日本各地にあり、それぞれの「鬼」を表すスタイルのお面の展示は、私とMちゃんにとって非常におもしろかったです。
特に印象に残ったのは、鬼伝説の由来の紹介でした。
例えば、酒吞童子の伝承に関して、一条天皇の在位期間に「赤疱瘡」と言われた流行病があったので、「鬼退治」は実は「疫病」の話だったという解説があります。また、天皇に服従せず都から追い出され、山賊になるしかなかった人は退治すべくもの、いわゆる鬼だったということもよく言われています。
博物館で初めて聞いてびっくりしたのは、鉱山師は鬼の由来だったのかもしれないということです。人を襲ったり、病気を広げたりしたわけではなく、普通に生活をしていた、製鉄により顔が焼けただれた人々でした。焼かれた顔だから、町民に恐れていたようでした。
鬼は、実際の社会ののけ者だったのではないでしょうか。そのように考えると、鬼はかわいいより、かわいそうです。
のけ者の鬼と外国人の私
鬼は、外来人だという解釈も昔からよく聞きます。
日本からすると外国人である私は、このようなことに対して怒りを感じません。むしろ、おもしろく思います。
高校・大学時代に「そうなんだ、私はモンスターだ!」と自分に冗談を言って、時にイライラする日に英語で、「私のことをかまわなくていい、今日の私はただのオーガだ※」と言ったこともあります。日本人にとって一般的な言葉に過ぎませんが、一度仕事で新人スタッフに「鬼教官」として紹介された時に、なんだか嬉しかったです。
※悪魔の「demon」という言葉より、「ogre」は私が個人的に好きな訳し方です。音も少し「鬼」に似ているからお気に入りです。
鬼がかわいいと思うから自分を鬼に例える面もありますが、日本の社会に100%溶け込めないから鬼に愛着を感じているのかもしれません。それは悪いことではなく、普通の事実です。いくら日本についての勉強を重ねても、マニアックな場所に足を運ぶ時に、私は何よりも先に「外国人観光客」です。
顔で見てわかる「外国人観光客」として、私とMちゃんはどんなにテンションが高まっても、周りの人の邪魔をしないように、礼儀正しく観光をしようとします。オーバーツーリズムの問題についてよく聞くから、周りの人の迷惑になりたくないし、私たちの文化ではない異文化を尊敬しないといけないプレッシャーも感じます。
しかし、私はわがままなマニアックなモンスターだから、幼なじみのMちゃんにもっとプレッシャーをかけました。福知山市から帰って来る途中、彼女は長旅の運転で疲れていたと思います。京都市と亀岡市の間の渋滞がどんどんひどくなっていて、日もそろそろ沈むときだったのに、私は「日本の鬼の交流博物館」の次に、どうしてももう一か所、酒吞童子ゆかりの地に行きたかったのです。
続きは、Part 2で紹介します。「首塚」で行われた少々怖い話になります。
>鬼ゆかりの地へ。アメリカ人の私にとって本当に怖かったのは…Part 2
今回のスポット
日本の鬼の交流博物館
住所:京都府福知山市大江町佛性寺909
開館時間:9:00~17:00(入館は16:30まで)
定休日:毎週月曜(祝日の場合は翌日)、祝日の翌日、年末年始(12月28日~1月4日)
入館料:
一般 330円
高校生 220円
小中学生 160円
公式サイト