外国人目線で日本の学園祭を体験してみた〜日中の学校行事の比較〜
私は以前から日本のドラマ・アニメを見るのが好きで、作品の中で文化祭・学園祭に関するシーンをよく見ました。当時から日本の学園祭という学校行事に興味を持っていましたが、あいにく日本の大学院に在学する二年間、学園祭はコロナで開催されませんでした。今回、出身大学の武蔵野美術大学が3年ぶりにリアルで芸術祭(学園祭)を開催することになったので、体験してきました。今年の芸術祭の様子と日本と中国の学校行事の違いについて紹介していきます。
『Bamboo Dome』:基礎デザイン学科の板東孝明先生と学生たちによる作品。
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芸術祭に行ってみた
今回の芸術祭は10月28日(金)〜30日(日)にかけて開催し、完全予約制となっております。約2週間前に予約が開始され、なんと2、3日で予約が全部埋まり、芸術祭の人気を実感しました。
2022年の芸術祭のタイトルは、「まうじゃないか」。「まう」は、Musashino Art Universityの略称、MAUから付けられています。江戸の活気を受けて、コロナの収束を芸術を通して願うというコンセプトのもと、このタイトルに決定いたしました。
このテーマを中心に、約1ヶ月前から、学生たちによる公式SNSの運営や公式サイト、宣伝動画の更新が始まりました。公式サイトはしっかり構成されており、オリジナルの江戸風イラストも独特なスタイルを持ち、学部生たちの実行力に感心しました。
さて、実際の芸術祭の様子を見てみましょう。
校門に入ってすぐのところに「江戸風」の受付所が設置されており、今回の世界観を強くアピールしています。学校の建築物は元々グレーをベースにしていますので、色鮮やかに飾られると、普段とのギャップでワクワクしました。
受付でもらったチラシには、芸術祭の紹介やタイムスケジュールが書かれています。今回は以下の四つの部分によって構成されています。
⚫︎展示
日本画や油絵などのファインアートやデザイン、建築など、計137の作品が出展しました。展示大賞なども開催され、美大ならではの風景ですね。ただ、展示作品は学内に散在していますので、ちょっと探しにくいかもしれません。
⚫︎模擬店
雑貨、手作り額縁、洋服や小物、自作漫画、アクセサリー、ガラス雑貨店などがあり、種類が豊富でした。大学には工業工芸デザイン、ファッションデザインなどの学科があるため、普通の手作り雑貨よりは本格的かもしれません。なかでも意外と人気があったのは、学校に住み着いている猫たちの「学生証」を販売する店です。
⚫︎企画
ファッションショー、灯籠作りのワークショップ、謎解きラリー、似顔絵、縁日などの企画がありました。特に人気があったのは射的ゲームでした。射的ゲームで一定のポイントを稼いだら、抽選で景品「先生たちの似顔絵カード」をゲットできます。
⚫︎イベント
神輿、ダンス、バンド、少し変わったプロレスなど、屋外イベントはどれも人気が高かったです。神輿パレードはそれぞれの校舎の前で一旦止まり、「美術館さん/○号館さん、いつもありがとうございます!」みたいなことを言います。外国人目線から見れば結構特殊な表現だなと思いましたが、すごく日本らしいとも感じました。
神輿パレード
学生によるダンスパフォーマンス
他にも、劇団、書道、剣道、人形劇などのイベントがあり、全てを見てまわることはできませんでしたが、充実した一日となりました。
食堂に設置されているバンド演奏
外国人から見る日本の学園祭の特徴
学園祭を実際に体験し、私から見る日本の文化祭・学園祭の特徴は以下です。
・学生が自主的に企画する
・部活が多いため、その分模擬店やイベントの種類も多い
・学校側が重視している(大学の場合はスポンサーもついている)
・学外の方も多く参加している
中国ではどんな学校行事がある?
次は、中国の学校行事について紹介したいと思います。
私が通っていた学校では、文化祭に似たようなイベントはありましたが、基本的には学校側が企画し、参加希望の学生たちがそれに応募するみたいな形でした。内容もそこまで豊富ではなく、メインとなるのは最後の発表会です。発表会は授業が始まる前に行われ、約30分の中でダンス、合唱、バンド、絵や書道コンテストの授賞などの内容があります。小学校から高校までは模擬店などのイベントはありませんでしたが、大学生の頃に私が通っていたキャンパスにはデザイン学科の学生が多かったので、「創意市集」というフリーマーケット的なイベントはありました。
その他、中国には「学农(学農)」、「军训(軍訓)」という特有の学校行事があります。「学農」とは、近郊の田舎に行って1週間ぐらいの合宿生活の中で、草刈り、芋掘りなどの農業体験をする行事です。ただ、中国では受験の競争が激しいため、高校の「学農」の時に、午前中は田舎の教室でテストを受け、午後は農業体験、夜は引き続き宿題をやり、たまにバーベキュー、キャンプファイヤーやダンス発表があるという感じでした。1日のスケジュールは結構奇妙に見えますが、楽しい時間もあったので、印象に残っています。
また、「軍訓」とは軍事訓練体験の略で、こちらも1週間ぐらいの合宿生活の中で軍人の生活習慣を学び、整列の訓練などを行う行事です。上海なら、東方緑舟 (オリエンタルランド)で「軍訓」を行う学校が多いです。「東方緑舟」は56平方キロメートルの広大な公園で、遊べるところも結構あります。スケジュール的には、70%が整列の訓練で、残り30%は講座を聞いたり、展示を見たり、チームでミッションをクリアするなどの遊びもありました。
どちらかというと、中国の学校は学校行事で学生の意志を磨くことを目的にし、日本の学校は学生の勉強以外の能力を鍛えることを目的にしていると感じています。目的は少し異なっていますが、やはり学校行事は楽しいですね。