デザートから見る、日本と台湾のうつわの違い
数年前に日本で暮らし始めてから、陶器市やクラフトフェアに目を触れる機会が増えました。自ら粘土を触り作陶を始めてからは、さらにうつわと食器の形をよく見るようになりました。ところで、日本と台湾の食文化は根本的に異なり、食文化はうつわにも影響するので、今回は日本の甘味と台湾のデザートの違いから、日本と台湾のうつわの違いを説明したいと思います。
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台湾デザートの特徴
台湾でのローカルデザート・スイーツには様々な種類があります。日本でも目にかかれるパイナップルケーキ、中秋節の月餅、お餅系のデザートなど、祭日の手土産として人気が高いですが、日常生活ではそこまで頻繁に食べないのが台湾食文化の実態です。
そこで、台湾での午後か食後のデザートをいくつか見てみましょう。
・豆腐より柔らかい食感を持つ「豆花(トウファ)」
・漢方食材から作った黒いとろとろスープ、冬の定番「焼仙草(シャオシェンツァオ)」
・モチモチ食感のタロイモ団子「芋圓(ユーユェン)」
・プルプルでさっぱり、レモンと相性良い「愛玉(アイユー)」
・タピオカより粒が小さくて柔らかい「粉圓(フェンユェン)」など…
白いのは豆花(トウファ)、黒糖ベースのスープと緑豆トッピング
左:愛玉(アイユー)、右:粉圓(フェンユェン)
様々な選択肢があります。その共通点の一つは、台湾でよく食べるデザートは「スープ」が付いてるのが一般的です。スープの種類として、黒糖シロップと氷か水を使ったさっぱり甘い系が一番多いですが、豆乳ベース、あずきベース、緑豆ベース、ピーナッツミルクスープもあります。
はと麦の甘いスープも人気がある(キクラゲトッピング)
台湾のデザートを盛るうつわ
台湾のデザートを盛る食器といえば、一番の特徴は深さと大きさです。夏になると氷が付いてるデザートも多いので、元々のスープだけではなく、食べる途中に氷が溶けていくので、ある程度の大きさが必要だと思われます。
また、台湾ではそういうデザートを食べる時に、レンゲ(散蓮華)状のスプーンで食べることが多いので、小さめの器で盛ると、少し使いづらいところがあると思います。
台湾デザートを食べる時によく使うスプーン
直径で言うと、14〜15cm以上のデザートうつわがよく見られます。ボウル、鉢状のうつわで盛り付けるこが多いですが、写真映りを意識して深皿に近いうつわを使うところも多いです。どのうつわでも、直径が比較的長く、容量が大きい特徴があります。
また、台湾では、スープがあるデザートを食べるときに、うつわを持つのは一般的な習慣でなないです。その理由としては、スープが多く、とろとろ状のお汁ではないので、持ち上げるつとすぐに溢れてしまう可能性が高いからです。
テイクアウトのかき氷はトッピングパンパン、自宅で盛り付けて食べます。
夏のデザートスープ以外に、冬では漢方食材を使うスープが多くて、特にあずきベースのスープには滋養強壮のイメージが強いです。しかし、台湾のあずきベースのデザートスープは、日本のぜんざいより水っぽく、より高温状態で食卓に出すことが多いです(台湾人は熱々のスープを好む傾向があるため)。そのため、うつわを持った状態で食べることにはあまり向いてないです。
日本の甘味を盛るうつわ
一方、日本では甘いスープがある甘味の中で、あずきベースのぜんざい・お汁粉が一番多いです。それを盛るうつわは汁椀と言われ、模様や大きさが様々ですが、直径10.5〜12.5cmのものが多く見られます。
容量からみると、300ml程度が適正だと認識されているようです。また、日本では汁椀を持つ時も多いので、正しい持ち方なども重視されます。そのために、材質にとらわれず、お椀を制作する際に、椀の持ちやすさを大事にする意識が浸透しています。
自分で作ったうつわに台湾デザートを盛り付け
自分で制作したうつわの側面
そこで、台湾人の私はデザート用の陶器のうつわを制作してみました。今回は美濃地域の粘土1種類をメインで使い、他の2種類の粘土を練り込んで、電動ロクロで成形しました。内側のみ釉薬を掛け、外側は土本来の質感を感じられるイメージで焼き上げました。
黒糖ベースのスープに生姜風味を添え、豆花のほかにあずきと芋圓をトッピングしてみました。
大きさ、深さもあって、日本の感覚だと、汁椀よりボウルに近いうつわです。直径は約13cm、容量は500ml程度です。そして、台湾のデザートを盛るために豆花も作ってみました。自分のうつわで盛る豆花は格別に美味しく感じますね〜
実際にデザートを盛ってみたら、直径をもう少し大きくして、深皿的な感じに今度は制作してみたいと思います。台湾のデザートに向いてるうつわを作り出せるようにチャレンジしていきます。
日本、台湾と世界各地のローカルフードやデザートは奥深く、歴史や食文化の背景によってうつわの発展も人々の暮らしに深く繋がりがあります。次回は、多治見市での暮らしと台湾の麺料理を盛るうつわについて発信していきたいと思います。