テリヤキ=照り焼き?アメリカでは代表的な日本食・テリヤキの真実
「日本食が大好きです。特にテリヤキが好きです。」
という人に会ったことがありますか?日本ではほぼそういう人と会わないと思います。しかし、私の出身アメリカでは、このような宣言をする人が多いです。
私はアメリカで生まれ育った日本人とのハーフのシンシアと申します。そのため、家では毎日日本食を食べてきました。
友達と好きな食べ物の話をしているときや日本食のレストランに行くとき、必ず出てくるのはテリヤキです。メニューの上の方にテリヤキチキンが並べられたり、友人との電話で「最近テリヤキソースにハマってる!日本の味って最高よね!」と言われたりすることが非常に多いです。アメリカではテリヤキは代表的な日本食と認識されています。
ある日ふと思いました。「あれ?私、家ではテリヤキを一度も食べたことがないな」。日本人の母に聞いたら、「テリヤキは本当の日本食じゃないから」と言われました。では、テリヤキは一体何なのでしょうか?
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アメリカで食べたテリヤキとは
まずは「照り焼き」と「テリヤキ」の違いについて触れたいと思います。
日本の照り焼きは、しょうゆのタレで焼いた、主に魚の料理を指します。表面に「照り」がでるように焼くところが名前の由来となりました。一方、アメリカで知れ渡っているテリヤキは、魚の料理ではなく、チキンの料理を表しています。照り焼きで使われるタレと似ているしょうゆベースのソースを使った、少し甘味のあるチキンの料理です。
分かりやすくすると日本の照り焼きは主に調理法を、アメリカのテリヤキはソースを示します。そして照り焼きは日本で知られているとしても、決して代表的な料理だと思われていません。しかしアメリカではテリヤキは寿司とラーメンにも負けないくらい人気の日本食です。
アメリカで食べた日本食の背景
アメリカで初めてレストランでテリヤキ料理が売られたのは、ハワイかシアトルだと考えられています。その由来は鮮明ではありませんが、照り焼きに似たものが複数の場所で同時に誕生したと考えても不思議ではありません。
テリヤキは本物ではない、「アメリカン」な日本食だと思われている人が多いですが、実際は日本人の移民が作った料理です。アメリカに来て、食材のセレクションが日本と少し違ったせいで、魚ではなくチキンを使い、アメリカではよく使われるニンニクも足し、懐かしい味を新しい土地の食材で再現した、実験的な料理です。そういう風に考えると、テリヤキは「偽物」の日本食ではなく、移民が工夫して作った料理だと考えた方が正しいです。
移民の多いアメリカでは、これは頻繁に起こる現象です。たとえば、アメリカンチャイニーズの定番料理のオレンジチキンや、イタリアでは考えられないフェットゥチーネ・アルフレードなどの料理が非常に人気があります。
日本でも人気を集めたカリフォルニアロールも同じです。アボカドとしょうゆを組み合わせるとマグロみたいな味がすることを踏まえ、アメリカでは入手困難の新鮮なマグロの代わりにアボカドを入れて誕生しました。そのため、生魚に抵抗のあるアメリカ人にも受け入れられやすく、今でもその人気は途絶えることはありません。
料理は文化の一つで、文化と同じく常に変わり、進化しているものです。寿司とブリトーを合体した「sushiritto」みたいに賛否両論の料理もありますが、好き嫌いはさておき、それは活発な料理活動の証だと思います。「本物」と「偽物」にこだわるより、料理の歴史と起源を理解することが大事だと思っています。最近日本でもアメリカのテリヤキを所々で見かけます。
テリヤキは本物の日本食ではないと思う人がいますが、日本人の移民の手で作られたものが、アメリカでは人気を集め、また日本に渡ってきました。
このような料理の変化には文化の交流をうかがい知ることができます。食事は立派な歴史の記録の一つです。本物かどうかより、その食事の背景に何が隠されているのかを考慮したほうがおもしろいと思いませんか?