日本と中国における字幕にまつわる映画・動画鑑賞の習慣の違い
映画鑑賞が好きなので、休日はよく映画館に行きます。ただ、初めて日本の映画館で映画を見た時、ひとつ戸惑うことがありました。それは「なんと字幕がついていない?」とのことでした。外国語の字幕を望んでいるわけではなく、「せめて日本語の字幕があれば、聞き取りやすくなるのに」と思いました。なぜこう思ったのかというと、中国では基本的に全てのドラマ・番組・映画に中国語の字幕がついているからです。今回は日中における字幕にまつわる映画・動画鑑賞の習慣の違いについて紹介したいと思います。
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日本の場合の字幕
日本ではバリアフリー映画というものがあり、「耳の不自由な方に映画を楽しんでいただけるよう、期間限定で日本語字幕付き上映を行う」ことを指します。上映する際にヘッドフォンや字幕メガネの貸出も行っています。
テレビとYoutubeの場合は、リモコンやYoutubeのボタンで字幕のon/offの切り替えができる仕様となっています。テレビの字幕は大きくて見やすいですが、その反面、字幕は画面の3分の1ぐらいを占めており、画面に集中したい人にとっては確かに邪魔かもしれません。
中国の場合の字幕
一方、中国ではテレビから映画館、個人Youtuberの動画(中国の場合はbilibili)まで、基本全ての動画に中国語の字幕がついています。しかも、on/offの切り替えのできない埋め込み形式となっているものが多いです。日本のテレビの字幕と比べて、フォントサイズが割と小さめで、効果音に対する描写の言葉も含まれていません。また、埋め込み形式なので、媒体によってフォントサイズを変更することももちろんできません。バリアフリー的に考えると、確かに改善の余地は多々ありますが、一応中国の字幕は全ての人に向けて提供していますので、仕方ない部分もあるかもしれません。
中国語がわかるのに、なぜ字幕が必要?
では、なぜ中国語がわかる人に字幕が必要なのでしょうか?
実は、埋め込み式の字幕は最初香港と台湾で流行りました。当時は現場の音声収録の質が低いことから字幕が使われたそうです。80〜90年代、香港ドラマが中国本土で流行り、標準語を使っている人は広東語が分からないので、やはり字幕をつける必要があったのです
字幕を使う理由を簡単にまとめると、以下の理由が挙げられます。
・方言の問題
・聞き取りやすさ
・音声収録の質の問題
・俳優さんの滑舌の問題
・中国語は表意的な言語で、かつ日本語より文が短いので、字幕がある場合はセリフを読み終える前に意味を把握できる。
以上の理由から、字幕をつけることが徐々に定番となり、中華圏の人の鑑賞習慣となりました。習慣はなかなか変えられないので、方言を使うドラマが少なくなり、音声収録の質が良くなった今現在でも、字幕がないと不自然と感じる人が多いです。
最後に、なぜ中国は「クローズドキャプション(closed captioning、CC)」ではなくて埋め込み形式の字幕を使うのでしょうか?
*クローズドキャプション:視聴者がリモコンやボタン操作によって字幕表示のon/offを制御できる字幕です。
ある中華圏Youtuberの動画で、ひとつの面白い現象が紹介されていました。それは「埋め込み字幕がない動画の直帰率が高い」という現象です。
前述したように、中華圏の人は字幕を見る習慣があります。しかし、Youtubeで字幕をonにする操作は手間がかかりますので、わざわざonにしない人が多いです。ですが字幕がついていない動画はなんとなく聞き取りにくい部分がありますので、直帰率の高さに繋がると言われています。
クローズドキャプションと埋め込み式の字幕にはそれぞれ特徴があり、どちらが良いとははっきり言えないですが、ただひとつ注意できるポイントは「中華圏向けの動画には字幕をつける」ということです。